1970年代の石油ショックの影響を受け、米国は1973年に原油輸出を規制し、カナダ以外の国・地域向けの原油輸出を禁止した。今、原油輸出を緩和することにはどれほどの影響があるのか?6月21日当日、米国の政策研究機関であるアスペン・インスティテュートが発表した「原油輸出解禁 米国製造業への影響」研究レポートは、「米国の原油輸出が解禁されても、それが原因で米国国内のガソリン価格が上がることはなく、米国国内及び世界の石油価格に対する『穏やかな』値下げ圧力となる」と分析した。米国会計検査院(GAO)が6月20日に発表した報告書は、「米国の原油輸出解禁は米国の原油生産量を増やし、世界の原油供給を増やし、それによって国際石油価格が下がるだろう」と指摘していた。
第三に、国際石油価格暴落は中ロが4000億ドル相当の天然ガス供給契約を結んだ後に起きており、これが偶然の一致であることはあり得ない。国際石油価格は国際情勢の影響を受けやすい。特にエネルギー供給大国ロシアに関わってくる。ウクライナ情勢の緊迫は本来なら石油価格の暴騰を招くはずだった。ブレント原油価格の推移を分析すると、ウクライナ問題発生の初期、原油価格は確かに上がったが、米国政府が石油輸出規制緩和を発表した後、国際石油価格が打撃を受けたことが分かる。
以上の3点の分析を総合すると、今回の国際石油価格下落は、米国がその主要要因である。国際石油需要にそれほど大きな変化はなかった。まさに米国が供給量を増やしたことで供給が過剰になり、市場消費心理にも変化が生じたため、国際石油価格の暴落を招いたのである。
米国はなぜそうする必要があったのか?唯一の合理的な説明はロシア対策だ。ウクライナ情勢の緊迫により、米ロ関係は以前にも増して冷戦時代に入ったかのような様相を呈している。米ソ冷戦時代、米国は石油価格を操作することでソ連経済をほとんど崩壊させた。今回の石油価格下落も、米国が故意に以前のやり方を使ったのではないかという疑念は払拭できないだろう。
米国にとってみれば、ここ数年「エネルギー独立」戦略が効果的に推進され、シェールガス開発が大きな成果を上げるにしたがって、米国はエネルギー自給率低下傾向を完全にひっくり返し、現在、米国のエネルギー自給率は80%を超えている。原油輸出規制緩和は、米国の石油生産量を増やし、国内石油価格を下げて消費者に利益をもたらすことができると同時に、国際石油価格の抑制を通じてエネルギー依存国であるロシアの経済を抑制することもできる。このような人に損をさせて自分の利益をはかるような事を米国がやらない理由はない。ここ数カ月間、米国がどれだけの原油を輸出したか知るよしはないが、米国API原油在庫統計に基づいて計算すると、7月だけで米国の原油在庫は何千万バレル減っており、これは欧州の1日当たり石油供給量が10%増えたことに相当する。米国の石油価格に対する影響はこの点からも推量することができる。
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