本誌記者 曾文卉
今年に入ってから、フィリピンやベトナムなどが南中国海問題をめぐって中国と対立する姿勢を強め、南中国海情勢の緊張が日増しに高まっている。5月2日から、ベトナムは船舶を派遣して中国海洋石油集団の掘削装置「海洋石油981」への衝突を繰り返し、正常な作業を妨害しており、絶えず激化する南中国海紛争は国際社会から広く注目されている。
これに対し、中国外交部の張業遂副部長は第3回世界平和フォーラムで発言した際、「西沙諸島は中国固有の領土で、中国政府の実効支配下にあり、いかなる係争も存在しない。中国企業の西沙諸島海域における活動は実は10年前から始まっていた。今回の掘削作業は10年前の準備作業の続きである」という中国政府の立場を再び強調し、「ベトナム側が中国の掘削作業妨害や掘削装置への衝突を繰り返していることに対し、中国側は自制的な態度を取っているとともに、関係企業の海上作業の安全と航海の安全を確保するため、効果的な措置を講じている」と述べた。
一方的に対立を激化すべきではない
「平和共存五原則」が打ち出されて以来60年、平和共存にかかわる中国の理念は世界各国の共通認識であり続けている。領土係争問題に対して、中国は常に平和交渉と協議解決の基本原則を守ってきた。短期的には統一見解に達しがたい係争地域、特に島や礁、海洋、周辺海底資源に対し、故鄧小平氏は「主権紛争を棚上げし、共同開発する」という独創的な方針を打ち出した。これは「国連海洋法条約」の精神に合致しているとともに、世界の領土紛争解決に新たな構想を提供するものであった。今年、習近平国家主席は、共通、総合、協調、持続可能というアジアの新安全保障観を明確にし、平和を重んじ平和的発展を目指す中国の文化的理念を再び示した。
中国共産党中央党校の李君如元副校長は、「領土や領海の主権係争の解決には、平和交渉と武力という2つの手段しかない。領土の面では、中国は協議を通じて12カ国と国境を画定した。戦争手段を取るのは中国の平和発展戦略と相反し、中国の『2つの百年』発展目標(中国共産党創立百周年までの『小康社会』(ややゆとりのある社会)実現と中華人民共和国建国百周年までの近代化基本的実現)にも合致していない」との考えを示している。
マレーシアのアブドラー・バダウィ前首相は、紛争を棚上げし共同開発するというやり方は非常に重要なものであるとしており、「紛争の棚上げは当面の問題解決に役立つ。我々がやるべきことは、共に分かち合い、共に協力しあうことだ」と述べている。
中国の掘削作業に対するベトナムの妨害について、中国・太平洋諸島フォーラム対話の杜起文特使は、「南中国海沿岸国として、中国は南中国海情勢の激動を最も望まない。中国は直接関連する当事国との間で、史実と国際法を尊重した上で、二国間交渉を通じて紛争を解決するよう終始努力している。問題が解決されるまで、一方的に対立を激化し、地域の平和と安定に影響を与えるような行動を取るべきではない」との評価を示し、「問題を解決する過程で、互恵・ウィンウィンの協力展開が妨げられることはない」と述べた。
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