本誌記者 蘭辛珍
20年前に中国の多くの地方政府が発行した外資企業誘致・外資導入パンフレットをめくると、外資企業投資を引き付けるために、税収優遇以外に最も魅力的な優遇措置があったことに気づくだろう。現地政府による企業への工場建物建設用地無償提供である。
まさにこの土地の無償提供により、多くの地方で工業が急速に発展した。しかし今、これらの地方、特に東部沿海都市は、用地として使える土地がないことで頭を悩ませている。高値を提示しても意味がない。都市で使える建設用地をすでに使い果たしてしまったからだ。建設用地がなければ、企業の工場建設ニーズを満たすことはできず、経済のステップアップは難しい。
多くの人が11月に北京で開催予定の中国共産党第18期中央委員会第3回全体会議に注目している。今回の会議で討議されさらなる推進が見込まれる改革に、人々は大きな期待を寄せている。そのうち農村土地制度改革が焦点の1つになっている。
情報筋が本誌に明かしたところでは、今回の会議では農村土地使用権譲渡の市場化メカニズムが確定されるという。これは、農村建設用地使用権譲渡の規定を緩和し、村集団が一定条件内であれば土地収用手続きを経ずに直接農村建設用地を販売することを許可するものだ。同政策は農村建設用地に適用され、耕地はこれに含まれない。
現在、農村土地改革で最も敏感な問題は農村集団建設用地だ。社会科学院農村発展研究所マクロ室主任の党国英氏の推定によると、農村集団建設用地は約18万平方キロあると見られる。これは目下中国で都市化されている面積の3倍以上に相当する。
農村集団建設用地が政府の土地収用による国有地への変更を経ずに直接市場で取引されるようになれば、土地市場に対する政府の高度独占が打破される。そうなると、不動産価格が市場により見直されることを意味するだけでなく、100兆規模の投資機会創造、大量の工業・都市建設用地の提供、工業・就業に導かれた新興都市化発展の促進といった土地市場構造の激変がもたらされるだろう。中国はまたも重大改革で飛躍を遂げることになる。
スタンダードチャータード銀行中国エリア・チーフエコノミストの王志浩氏は、「中国に長期的に存在する土地開発の低効率と農民への補償不足といった問題をいかにして解決するかについて各方面で激しい議論が交わされていることから、急進的な措置が打ち出される可能性はあまりないだろう。それは、新たな土地改革の効果の当面の影響が限定的で、効果が表れるにはある程度時間が必要なことも意味している」と指摘する。
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