馮昭奎
放射性物質拡散問題に悩まされる日本は、米国シェールガス革命など国際エネルギー情勢の変化を受け、エネルギー戦略上、「リバランス」とも言える大きな調整を行った。
1つ目の「リバランス」は、生産国から輸入国への傾斜を強めたことだ。明治維新以来、日本の工業化は主に国産の石炭に頼ってきた。1960年代、日本は石炭から中東産石油の輸入へと急速に転じていく。それと同時に、日本は原子力発電事業を推進し始めた。「準国産エネルギー」として、原子力発電の総発電量に占める割合は増え続けた。2011年に福島第一原子力発電所で事故発生後、日本は保有する50基余りの原発原子炉の稼動を中止し、天然ガスや石油、石炭の輸入を大幅に増やさざるを得なくなり、エネルギー輸入国へと逆戻りした。
2つ目は、エネルギー構造上、天然ガスへのいっそうの傾斜である。福島第一原発の事故発生前から、日本はすでに世界最大の液化天然ガス輸入国だった。福島第一原発事故発生後、日本の天然ガス輸入はいっそう増加した。日本は天然ガスを輸入エネルギーの筆頭とし、2020年度に天然ガス火力発電所30カ所余りの稼動を開始する計画だ。一方、同年度に稼動を開始する石炭火力発電所はわずか3カ所である。
3つ目は、天然ガスの輸入元が中東から北米・オーストラリアに移りつつあり、そのエネルギー輸送の重点ルートが太平洋航路へと変わっていることだ。現在のところ日本はまだ中東産石油に対する依存度が高く、2012年の中東産石油輸入は石油輸入総量の74.9%、2011年は87%だった。中東情勢が不安定であるため、石油価格の高止まりと変動が日本のエネルギー安全保障にとって大きな脅威となっている。米国シェールガス革命の進展に伴って、廉価なシェールガスの天然ガスに占める割合が急上昇し、米国の天然ガス価格が大幅に低下、その価格は現在アジアが輸入している天然ガスよりかなり安い。日本はすでに米国と2017年に米国天然ガスを輸入する協定を結んでいる。日本は中東からマラッカ海峡、南中国海を経て日本へと至る「南方エネルギー輸送路」を利用し続けると同時に、「太平洋エネルギー輸送路」の利用とその航行の安全確保をより重視している。
ますます強くなるエネルギー供給関係は日米豪の関係をよりいっそう強固にまとめ上げ、中国海軍の太平洋エネルギー輸送路へのいわゆる「脅威」に対する共同防衛を強化し、中国海軍の第1、第2列島線突破と太平洋遠洋進出を阻止しようとしている。日米両国は釣魚島とその周辺海域を中国海軍の太平洋進出を阻止する上での戦略的要衝とし、連携して中国に対抗する立場をますます明確にしており、我が国の正統な主権擁護行動にとってより大きな圧力となっている。しかし、ますます増えるエネルギー需要を満たすために、中国も同様に米国やオーストラリアとエネルギー提携を進める必要がある。太平洋エネルギー輸送路は中、日、米、豪などの共通の海上輸送路であり、中国は太平洋エネルギー輸送路の安全の「擁護者」であり「挑発者」ではないことを、日本は認識するべきである。
(作者は中国社会科学院日本研究所研究員)
「北京週報日本語版」2013年10月15日
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