一つには、中国の国際収支は黒字が続いており、中国の経済は世界でも唯一際立った成長を見せているため、海外短期資金にはそもそも中国流入の動機があった。そのため人民元は切り上げ圧力に直面していたが、各国が競うようにして金融緩和したことでさらにこの圧力が高まった。しかし、中国通貨当局が干渉を強めて急激な人民元高を避けたり、ひいては人民元安を誘導した場合、中央銀行は外貨購入規模を拡大して人民元の流動性を高めなければならなくなり、そうなれば国内インフレ圧力が急激に高まるだろう。中央銀行が中央銀行手形の発行を増やしたとしても、一部の相殺されなかった新規増加通貨供給量が商業銀行ルートを通じて経済体に流れるため、抑制されていたインフレが再び起こるからだ。
しかしその一方で、相応の通貨政策調整を行わず、外資が流入して人民元高になるのに任せておけば、中国の輸出企業がすでに直面している厳しい外部環境はさらにひどい状況になり、最終的には中国企業の輸出競争力を弱め、中国の輸出に損害をもたらすだろう。
筆者は、中国はやはり現在の穏健な通貨政策を堅持し、既定のステップに沿ってゆるやかに人民元為替レートの弾性を高めていくべきだと考える。
人民元安にすべきではないが、名目為替レートの値上がりを加速したり値上がり幅を拡大したりすることも望ましくない。人民元安にすべきではないのは、人民元名目為替レート安になると国内インフレが進むのは必至で、その結果やはり人民元の実効為替レート高を招いてしまうからだ。しかし人民元名目為替レート高を加速するべきでもない。そうなれば、より多くの短期資金の中国流入を招いてしまうだろう。中国は明確な通貨政策操作を通じてこうした投機的資金流入の動機を取り除くべきだ。ゆるやかな名目為替レート高と、一定のゆるやかで制御可能なインフレによる人民元実効為替レート高が、現在取ることのできるベストな政策選択だろう。
もちろん最終的には、中国は国内金融体制改革の加速を通じて通貨政策の内外双方からの圧力をなくし、同時に産業構造と製品構造の調整を通じて中国企業の国際競争力を高め、通貨政策・為替レート政策自主調整のために堅実な基盤を作る必要がある。
「北京週報日本語版」2013年6月14日 |