徐明棋(上海社会科学院世界経済研究所副所長、研究員)
連邦準備制度理事会(FRB)の量的緩和政策第4弾はまだ継続しており、毎月850億ドルの国債・住宅ローン担保証券購入打ち切りの具体的な期限はまだ設けられていない。
日本の緩和政策はFRBより過激だ。日本銀行の資金投入規模はFRBに迫っているのに、日本のGDPは米国の40%しかないからだ。日本が量的緩和政策を打ち出したことで、為替相場は大幅な円安となり、昨年平均して1ドル80円を維持していた状態から102ドルまで急落した。
日本の緩和政策に対し、米国を始めとするG8は黙認の態度を取っている。これは、経済的に見ると米国の景気はすでに回復しつつあり、日本の量的緩和政策の米国への影響は大きくないからだ。一方欧州では現在景気が後退しつつあり、米国と日本の援助を必要としている。特に米国と日本が国際通貨基金(IMF)を通じてEU加盟国に資金投入し援助を増やしてくれることを望んでいる。そのため、この時期に日本の通貨政策を批判することは望んでおらず、欧州中央銀行が利下げをすることで一部衝撃を相殺するに留まっている。また、新興市場国は日本の量的緩和政策のマイナス影響を被っているが、多くの国は目下のところまだ影響の大きさを判断できずにおり、さらにG8が沈黙していることもあって、ふさわしい旗振り役がいない状況にある。
こうしたことから、国際社会は批判を行っていないものの、一部の国がマイナス影響を食い止めようと金融緩和に走る局面が生まれている。5月2日、欧州中央銀行はリファイナンス金利を0.5%引き下げ、限界貸付ファシリティ金利を50ベースポイント(bp)引き下げて1%にすると発表した。5月3日、インド中央銀行も基準金利の0.25%引き下げを発表、5月7日にはオーストラリア中央銀行が0.275%の利下げを発表した。さらに5月8日にはポーランド中央銀行も金利を0.25%引き下げ3.0%とすることを発表、5月9日には韓国中央銀行が0.25%の利下げを発表した。5月10日と13日には、ベトナム、スリランカ、イスラエルもそれぞれ利下げを発表した。
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