時永明(中国国際問題研究所副研究員)
中日韓3カ国の自由貿易協定(FTA)第1回交渉会合が3月28日、韓国ソウルで終了した。3カ国は「全面的で高レベル」のFTA締結について合意に達し、まず貿易や投資など10分野の作業部会と知的財産権問題に関する専門家会議を設置することを決定した。また3カ国は年内にあと2回交渉を行うことも決定した。第1回交渉の順調さは3カ国の高い積極性を示しているが、交渉中各国の考えの違いが顕著であったことは、協力の中にも熾烈な競争が存在することを暗示している。
3日間にわたる中日韓FTA第1回交渉会合が3月26日、ソウルで行なわれた。写真は中国の兪建華首席代表(左)、韓国の崔京林首席代表(中央)、日本の鶴岡公二首席代表(右)(朴真熙撮影)
中日韓は東アジア経済の核心
地域的にも世界的にも、中日韓3カ国はいずれも重要な経済体だ。2011年に3カ国が発表したFTAの実行可能性報告では、2011年の3カ国のGDPは14兆2800億ドルに上り、東アジア16カ国の約72.3%を占めると指摘されている。東アジアが世界経済成長の重心であると言うならば、3カ国の経済の世界経済に対する影響も言うまでもなく明らかだ。
しかし、中日韓経済は輸出依存型経済、しかも地域性輸出依存型経済である。3カ国間の経済一体化レベルはまだ低い。3カ国の地域内貿易は以前の極めて低いレベルよりは比較的速く成長しているものの、その割合は依然として4分の1に満たない。2013年、東アジア16カ国は東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の交渉開始を決定した。地域内には2カ国間FTAが網の目のように張り巡らされているというのに、中日韓3カ国間には2カ国間協定すらない。こうした状況は、東アジア地域経済や3カ国経済の発展と極めてつりあわないものだ。3カ国が経済一体化を大きく進めることができた時、初めて欧米以外に本当の意味での東アジア経済センターが形成されたと言うことができる。したがって、中日韓のFTA交渉開始には世界的にも地域的にも非常に大きな意義がある。
競争と相互補完構造の融合
中日韓FTA設置プロセスの緩慢さは3カ国の経済発展レベル格差と密切に関わっている。3カ国はそれぞれ発展途上国、新興工業国、先進国という3つの異なる発展段階にある。3カ国間の経済は主に相互補完型で、垂直的分業の関係として現れる部分が大きい。
中日貿易を例に取ると、中国の電気機械製品の平均関税は日本より高いが、それは中国が日本にとって第一の輸出対象国になるのを妨げてはいない。しかも2012年の例を見ると、日本財務省の統計で、日本の対中輸出電気機械製品は54%を占めているが、中国の対日輸出のうち同類製品の割合は44.9%だった。その主な原因は、1つには中日間に依然として比較的顕著な技術格差があること、2つ目は日本が産業チェーンのハイエンドにあるという産業構造が日本の対中輸出に影響しているからだ。
現在のところ、中日韓3カ国では韓国製品と日本製品の競争が熾烈になっており、ひいては比較的強い代替性すらある。中国製品も次第に追いつきつつある。3カ国間の垂直格差は縮まってきており、水平的競争へと変わりつつある。
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