中国人民銀行(中央銀行)が先ごろ発表した「2012年第4四半期金融政策執行報告書」は、経済情勢の改善に対する自信を示すとともに、今後のインフレ懸念の高まりも指摘している。
今年の金融政策は依然「穏健で慎重」
中国人民銀行の最新報告書は、預金準備率の2度にわたる0.5ポイント引き下げ、双方向の公開市場操作、預金・貸付金利の2度にわたる引き下げ、信用貸付の合理的かつ適度な増加の促進を含む昨年の一連の金融政策を回顧した。特に昨年下半期以降、逆現先取引を連続実施し、合理的かつ適度な流動性と市場金利の安定を保った。
同時に、金利の市場化と為替レート制度の改革は大きな一歩を踏み出した。金融機関の預金金利変動幅の上限は基準金利の1.1倍、貸付金利の変動幅の下限は基準金利の0.7倍に調整された。人民元相場形成メカニズムの改善を続け、銀行間直物外国為替市場における人民元対米ドルレートの変動幅を0.5%から1%に拡大した。
業界関係者は、CPIの低下は底を打ち、今年のCPIの昨年同期比増加は上昇周期の初期に入ると見ている。
資産に敏感になる市民
同報告書によると、2012年末時点で、広義貨幣流通量(M2)は97兆4200億元に達し、前年同期比で13.8%増えた。この数値は世界マネーサプライ総量の4分の1弱に達しており、米国の1.5倍に相当している。一時期、「通貨超過発行」が再び世論を賑わせた。
これに対して、中国人民銀行の周小川総裁は次のように答えている。「一つには、高貯蓄国と低貯蓄国の広義貨幣のGDPに占める割合はそれぞれ違うということがある。中国は高貯蓄国であるため、GDPに占めるM2の割合が高い。その一方で、間接融資の割合が高い状況のもとでは、広義貨幣のGDPに占める割合は高くなる。米国は典型的な直接融資が発達した国で、中国は間接融資の割合が大きい。そのため、広義貨幣とGDPとを単純比較するつもりはない」。
安邦諮問チーフ研究員の陳功氏は、「通貨供給量は確かに多めだ。現行の人民元相場形成メカニズムは中央銀行の通貨供給量コントロールを弱めている」と分析している。
「今のお金は本当にたいした値打ちがなくなった」、「野菜市場に行っても100元くらいではたいして買い物もできない」。手持ちの人民元の購買力がこれ以上「強く」なることはないと嘆く市民は少なくない。
資本項目では小幅黒字の見通し
同報告書によると、2012年、中国の国際収支経常黒字は2138億ドル、資本収支の赤字は1173億ドルに達した。資本収支で、資本項目の年度黒字が現れたのはアジア金融危機発生以降これが初めてのことだ。これは、過去1年において中国が資金流出の圧力に直面していたことを示している。
資本流出の原因について、スタンダードチャータード銀行エコノミストの王志浩氏は主に3つの方面があると分析している。(1)一部の国民は資産を海外に移転し、資金を送っている。しかもこの傾向は続くと見られる。(2)人民元切り下げの予期が市場に影響を与える場合、あるいは経済見通しが比較的暗い場合、資金の流出が増える。このような周期的な流動が潜在的な構造的流出を激化させた。(3)国家外貨管理局は「資本収支が赤字、経常収支が黒字」という収支構造を歓迎しており、これが本年度の外貨準備高政策目標の中の1つになるかもしない。
大方のエコノミストは、「中国経済と世界経済が回復を続ければ、恐慌性の資本流出は現れないだろう。今年、中国の資本収支は小幅な黒字が現れ、同時に人民元は再び引き上げ圧力に直面するだろう」と見ている。
また、第4四半期のデータによると、資本収支の赤字は第3四半期の520億ドルから140億ドルに縮まった。これは2013年に入って資本流出に歯止めがかかり、資本収支が若干黒字がある状態に回復したことを意味している。
「北京週報日本語版」2013年2月20日 |