本誌記者 蘭辛珍
世界の食糧価格上昇に中国政府は懸念を抱き、行動を起こした。8月13日、国家発展改革委員会価格司(局)は中糧集団、益海嘉里、魯花集団、九三油脂集団、匯福糧油集団など食用油企業を集めて会合を持ち、上記5社に対し、食用油価格報告制度を立ち上げ、食用油の生産者価格、卸価格、小売価格を国家発展改革委員会に定期報告するよう要請した。
国家発展改革委員会価格司は7月24日にも最大手2社の益海嘉里、中糧集団のトップを呼んで会合を持っており、2社の食用油ブランド価格を安定させるよう要請していた。この2社は小型包装食用油市場の大半を握っている。1カ月に満たない間に、発展改革委員会が2度も食用油市場の管理に乗り出したことは、中国政府が目下の食糧価格変動をかなり警戒していることを示している。食用油価格報告制度は、中国政府が世界の食糧価格急騰への対応として打った最初の一手である。
世界的減産で食糧価格が上昇
米国、ロシアなど世界の食糧主産地域国が深刻な干害に見舞われたため、世界の食糧は大幅減産となった。米国農務省のデータによると、8月5日現在、米国が収穫を「非常に悪い」、「悪い」と予測したダイズの割合は1988年の被害状況を上回る39%となり、トウモロコシは50%に達した。
8月4日、米国インディアナ州のトウモロコシ畑では、深刻な干ばつでトモロコシのほとんどが立ち枯れた。米国は半世紀以来最悪の干害に見舞われている(AFP)
食糧の減産により、世界の食糧価格は上昇した。国連食糧農業機関(FAO)が8月9日に発表したデータによると、55品目を対象とする世界食糧価格指数は7月に6.1%アップし、213.1ポイントになった。6月は200.8ポイントだった。
農産品分析機関の東方艾格の報告では、食糧価格上昇により貧困国が大きな打撃を受け、その食品安全性に影響が及び、さらには市場投機や貿易保護主義の台頭も招きかねないとしている。2008年には、世界的な凶作により30年ぶりの食糧危機が起きている。
国務院発展研究センター研究員の程国強氏は、短期的な食糧価格上昇による食糧危機は起きないだろうと話す。さしあたって米の価格に大幅な上昇はなく、2008年の食糧危機時のような条件は揃っておらず、全局的な影響をもたらすところまではいっていない。2005年~2008年半ばには、バイオマス燃料生産量の急速な拡大により世界の穀物、砂糖、植物油への全体需要が増え、食糧価格急騰を助長した。
今のところ食糧価格は全体的に2008年のような食糧危機を起こすところまではいっていないが、決して油断してはならない。多くの国が食糧価格上昇の影響に重大な関心を寄せている。
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