エンターティメント化された大がかりなコンテスト
決勝大会に出場した6名はいずれ劣らぬ見事な中国語で審査員と観客をうならせ、魅了した。外国で中国語を学びながら、ほぼネイティブスピーカーと変わらない発音で中国語を駆使できるようになるための努力は、並大抵のものではないだろう。心からの称賛と敬意を表したい。
しかし、ネット上で人気投票をしたり、タレントのように歌や特技を披露するコンテスト形式は、まるでオーディション番組かリアリティーショーを見ているかのようで、正直なところ若干の違和感を覚えた。決勝大会を見ながら、自分が見ているのは中国語コンテストなのか芸能大会なのか分からなくなってしまったほどだ。
一方で、ともすれば単なる学術教育交流の一環としてあまり注目されないまま終わりがちな外国人による自国語スピーチコンテストを、ここまでショーアップし一般大衆に注目されるコンテンツに仕上げるパッケージングの巧みさは、注目に値する。日本であれば、同様のイベントはテレビの教育系チャンネルで放送されるか、ニュース番組の一項目として報道される程度で、社会的な注目度は高いとは言えない。
インターネット人気投票など、テレビ番組として視聴率を煽るようなやり方に賛否両論はあるだろうが、それによりこのコンテスト自体への注目度は確実に上がり、中国人の一般市民と中国語を学ぶ外国人との心理的な距離を縮めることに大きく貢献していると思う。
また、日本の外国人スピーチコンテストのほとんどが日本在住外国人を対象としたものであるのに対し、「漢語橋」は中国在住ではなく母国での中国語学習者を対象としており、非常に間口が広い。世界規模で地区予選を行い、地区予選優秀者を本国での決勝に招き、長期間にわたって中国で語学やスピーチ能力を磨く大がかりな取り組みは、スピーチコンテストの枠を越えた大規模な国際交流プロジェクトでもある。
日本から参加した大学生。左から、田中悠貴さん(大阪大学)、毛利早紀子さん(北九州市立大学)、有川直美さん(鹿児島純心女子大学)
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