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今年の建築界の「ノーベル賞」、なぜ王澍氏に

 

時代の「幸運児」

07~09年、王氏は杭州市政府による歴史街区再開発プロジェクト「南宋(1127~1279)御街」で設計を担当した。

杭州市の中山路の南宋御街。設計した王氏はその建築の理念を語った 

「再開発となれば、各方面の利益が実際、表面に出てきます……」。そこで王氏は、「3つの条件」を提起。第1は、しっかりしたものを造るには、少なくとも3年は必要であり、取り掛かる前に、半年かけて調査・検討する。「中国の一部政府はプロジェクトを非常に急ぐため、わずか半年の設計ですぐに着工することが往々にしてあります」。第2は、生活感を維持するため、もともと住んでいた人たちを住まわせる。「すべての人が引っ越してしまえば、再開発しても、商業ゾーンだけになってしまい、生活の魅力は消えてしまいます」。第3は、「保護目的の解体」は絶対にしない。解体してしまえば、偽物を造ることになる。「私は、こうした厳しい条件を出せば、政府は難しいことが分かって考えを取り消すだろう、と考えていました。結果、すべての条件を受け入れてくれたのは、予想外のことでした」。

王氏は、自身にとって唯一の杭州商業・住宅プロジェクト「銭江時代」の設計をしていた時、幸運にも「これまでとは違う」ディベロッパーと出会った。その人物がこの6棟、26階建てのタワービルが並ぶ大型高層マンションに付けた名前は、「垂直院宅」。彼には庭園式の設計を通じて、中国人の隣人が共存するコミュニティーの生活を実現したいという思いがあった。「彼が試算してくれたのですが、このような隣人が交わる空間を造るには、1平方メートル当たり5000元として、5000万元はなくなってしまうと。彼はなかば冗談に、『理想』のお供をした結果ですよ……」。

王氏が設計を担当した、浙江省寧波市鄞州新市街地の「寧波博物館・五散房」プロジェクト 

もちろん、王氏が何度も「貴重な人」に出会ったのは、新しい時代のおかげもあるが、彼自身の揺るぎなさ、強い意志、守りの強さに負うところが大きい。

若くて軽はずみのところもあったこの建築家、朝日が昇るキャンパスで、綿入れのオーバーを着てザクロの花を好きな女の子、陸文宇さんに捧げてことがあるという。「彼女と知り合ってから、ずいぶん前に身に付けた文人の傲慢さが半分以上、なくなりましたね。ワイフは心穏やかな性格で、実は、私の今の設計の風格にも非常に大きな影響を与えました。ある意味で、彼女は私の先生だと言っていいでしょう」。

97年、二人は「業余建築工作室」を立ち上げた。「業余」(アマチュア)と名付けたことについて、王氏の最新の解釈は「中国の問題のある建築や新都市の建設に、専業の建築家は非常に大きな責任を負わなければなりません。そうであるなら、いっそのこと、業余、非専業になったほうがいいでしょう」。

「北京週報日本語版」2012年6月14日

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