中日韓FTA設置に役立つ
丁志傑氏は、「人民元と日本円の直接取引の影響は中日経済貿易にとどまらない。中日韓自由貿易協定(FTA)設置に向けてのプラスのシグナルだとも受け止められている」としている。
5月13日に北京で行われた第5回中日韓首脳会議で、3カ国の首脳は年内に中日韓FTA交渉を正式にスタートすることで合意した。中日韓FTAは人口15億以上の大市場からなる3カ国間自由貿易協定である。経済総量からいくと、中日韓はすでに世界経済総量の20%、アジア経済総量の70%を占め、北米や欧州と肩を並べる世界第3の経済圈となっている。FATが設置されれば、中日韓3カ国の経済全体が得るものは増えるはずだ。
金融面におけるFTA設置の条件は金融協力であり、それには通貨の直接取引が前提となる。年内に始まる交渉にとって中日通貨直接取引は間違いなくプラスのシグナルであり、この件に対する中国と日本の積極的態度を示すものだ。
当面の対ドル影響は小さい
メディアの中には、「中日がそれぞれ世界経済の2番手、3番手であることを考えると、ドルという中介抜きで中日両国の通貨が直接取引されることはドルの影響力低下を予見させる」という指摘もあった。
これについて中国外国為替投資研究院院長の譚雅玲氏は、人民元と日本円の直接取引によってドルの影響力が弱まることはないと言う。「ドルは世界通貨の『錨』であり、人民元と日本円が直接取引できるようになっても、両者のレート確定には依然としてドルを介することが必要だ」。
譚雅玲氏はこう説明する。「人民元の対日本円為替レートは従来ドルを介して決まってきたが、今後はマーケットメーカーの価格提示によって決定されるようになる。しかしマーケットメーカーとしては、提示するのは確かに人民元の対日本円為替レートだが、日本円の対ドルレートが絶えず変動している状況も考慮しなければならない」。
建設銀行でマクロ経済分析と商業銀行業務研究に専門に携わる研究員の趙慶明氏はこう述べる。「人民元も日本円も、直接取引するようになったからドルに影響するということはない。中国系銀行も外資系銀行も、ドルベースを完全にやめて日本円と人民元の為替レートを決めることはありえないからだ」。
「北京週報日本語版」2012年6月12日 |