本誌記者 蘭辛珍
中国には経済発展動向を研究する学術機関が数多くあるが、中国銀行国際金融研究所もそのうちの1つである。最近、この研究機関の報告書が極めて大きな注目を集めた。「中国経済金融展望季報(2012年第2四半期)」と題されたこの報告は、現在の中国経済運営におけるリスクは主に①生産能力過剰、②外国為替資金残高、③貸付金伸び率、④不動産調整の4つの問題に集中していると指摘した。
中国経済の良し悪しは今ではもう中国だけにとどまらず世界経済にも大きな影響をもたらし、特に人々の世界経済回復に対する自信に影響を与えている。そのため、中国経済のリスクを正確に知ることが非常に重要になってきている。
リスク警告
中国銀行国際金融研究所の報告は、中国経済が直面するリスクの1つ目に生産能力過剰を挙げている。報告によると、中国の生産能力過剰問題は日増しに顕著になっており、それは主に一部業界の商品価格暴落、企業の生産販売率低下、収益の大幅下落、赤字企業の赤字額大幅増加として現れている。
ここ2年の市場価格データを見ると、商品価格が大幅に下落した業界の典型例は、鋼材、セメント、鉄鉱石、石炭などである。
中国銀行国際金融研究所所長の黄志強氏によると、ミクロ的に見ると、生産能力過剰は企業の操業と生産能力活用不足を直接的に招き、経済資源の浪費と企業生産経営効率の低下をもたらす。マクロ的には、多くの業界で生産能力が過剰になると、物価総水準が明らかに低下し、強力なデフレ圧力が高まる。また、企業投資予測と住民消費予測が低下し、経済成長がますます顕著な減速圧力に直面する。さらに、銀行の不良資産増加と金融リスクの増大が引き起こされる可能性があるという。
中国経済における「外国為替資金残高問題」について、中国銀行国際金融研究所の報告は、「現在、外国為替資金残高の不安定な推移が中国中央銀行の通貨政策に影響しており、しかも政策決定を難しくしている」としている。
短期的に見ると、欧州債務危機の影響を受け、世界経済、特に先進国の経済成長の先行きは楽観できない。2月の中国の貿易赤字は315億ドルにも達した。長期的に見ると、現在、中国の輸出の対世界GDP比は2.8%前後に達し、対世界輸出比は10%近い。これは人民元切り上げの基礎にいつの間にか変化が生じ、市場の人民元切り上げ予測が弱まり、外国為替資金残高が減少していくことを意味している。
外国為替資金残高減少の最大の影響は、中央銀行の通貨政策調整の余地が広がるということだ。そしてこれは、中央銀行が通貨政策操作の柔軟性と主動性をさらに高め、経済の健全な発展を保証するのに役立つ。
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