生態建設を強化
毎年春になり、中国北部に大風が吹いて北京市民が砂塵に苦しむ頃になると、多くの人が砂塵は内蒙古から吹いてきたものだと不平を言う。これは事実だ。内蒙古の面積の半分は砂漠で、大風が吹くと砂塵が空に舞い上がりやすい。
美しく整備された赤峰雲銅公司の工場
内蒙古は温帯半湿潤、半乾燥、乾燥という3つの気候帯をまたいでおり、ユーラシア大陸の北方季節風の主な通り道になっている。中国政府は内蒙古を東北、華北ないしは全国で初の「生態防止線」とし、さらに2011年には国務院が21号文書を下達して、内蒙古は中国北部の重要な生態系安全バリアであることを明確に示した。
内蒙古自治区副主席の王玉明氏によると、内蒙古は中国北部の生態系バリアとなって経済を発展させてきたと同時に、「環境保護優先、生態系保護による自治区発展」理念を確立し、生態系保護と建設を最大の基礎建設として取り組んできた。
内蒙古の企業に対する環境保護要求はおそらく他の省や自治区よりも厳しいものだ。内蒙古赤峰市雲銅有色金属(非鉄金属)有限公司は銅の精錬と加工を主業とする製造企業である。非鉄金属加工製造企業は中国では一般的に高エネルギー消費・高汚染企業であるが、赤峰市雲銅公司の工場敷地内には他の省や自治区の同類企業で嗅ぐような鼻につんとくる臭気はなく、空いっぱいに廃気を出している光景も見られない。
赤峰市雲銅公司総経理の韓智氏によると、同社は内蒙古自治区政府の要求に従い、2005年~2008年の3年間で技術改造を行い、生産で発生する廃気、固形廃棄物、廃水を循環再利用し、環境保護に適した新製品を生み出したという。
内蒙古はさらに草原生態保護補助奨励制度の実行を大変重視している。王玉明氏によると、これは内蒙古が草原の植生を回復するために講じた措置なのだという。昨年、内蒙古はこのために各種補助金を50億元支給し、範囲を限った放牧などの措置を通じて、放牧地を草原に戻し、約6700万ヘクタールの草原植生を回復した。内蒙古は毎年大規模な植樹・植林を行っており、防砂林プロジェクトによる砂塵防止を図っている。
ほとんどの地域が乾燥或いは半乾燥地域であるため、内蒙古各地の市場では乾燥に強い樹木が主要取引商品となっている
内蒙古は現在中国で森林と草原面積が最も広い地域であり、森林面積は約2400万ヘクタール、草原面積は8800万ヘクタールに達する。「内蒙古の水土保持、水源保全、空気浄化、砂漠化防止、炭素吸収源などの面における貢献は全国一だろう」と王玉明氏は語る。
しかし内蒙古が行っていることは大自然の力に比べればごく小さなものだ。内蒙古は現在のところ依然として中国の省・自治区のうち砂漠化の危害が最も深刻な自治区である。王玉明氏によると、砂漠化という状況を徹底的に変えるため、内蒙古は1990年代から「生態移民」を実施しており、砂漠化地域に生活する人々を自然環境が比較的よい地域に移住させた後、砂漠化地域に植樹や苗植えなどを行って砂塵源対策を実施しているという。
過去十数年で、内蒙古は累計数十万人を生態移民させた。王玉明氏によると、生態移民は環境が劣悪な地域の貧困人口が貧困を脱するために有効なアプローチであり、農民・遊牧民全体が貧困を脱する上で、少ない労力でより大きな効果を上げることができた。また生態環境劣化を抑制する重要な措置でもあり、転出地域の人口圧力軽減や生態系回復に役立ったという。
王玉明氏はさらに次のように語った。「今後内蒙古はさらに生態移民プロジェクトに力を入れ、生態移民を通じて生態環境が劣悪な地域の農民や遊牧民が1日も早く貧困から脱するのを助ける一方で、生態系の回復と建設により内蒙古を中国北部の生態系バリア保護区にしていく」。
「北京週報日本語版」2012年4月19日
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