軍事費と核パワーという2つの猜疑
西側主要国にとって、中国の軍事費は永遠の謎だ。仮に中国が国際モデルに従って国防白書を発表したとしても、西側主要国はそれを「表向きの手段」とみなし、本当の数字が外部に知れることは永遠にないと考えるだろう。
2011年3月16日、アデン湾を航行する中国海軍第7次、第8次護衛艦隊の艦艇
指摘しておかなければならないのは、国の軍事費というものは100%透明にはできないということだ。例えば、米国が核兵器を開発した当時の支出はごく少数しか知らなかったし、F-117ステルス戦闘機の研究開発計画もごく少数の人しか知らなかった。技術の機密保持を考慮した面もあるが、もっと重要だったのは「切り札」としての効果を遺憾なく発揮することを保証することだった。後に、1989年の米軍パナマ侵攻、1991年の湾岸戦争のいずれにおいても、F-117ステルス戦闘機には奇襲効果があることが証明された。
改革開放の最初の20年間、中国の軍事費支出はずっと低いものだった。1990年代末になってから軍事費はようやく2ケタの伸び率で増え始める。軍事費成長の原因は次のようなものだ。(1)国家統一に備える。1990年代は台湾独立勢力が猛威をふるっており、中国の安全保障にとって従来とは違った安全保障問題の影響がますます際立つようになっていた。(2)戦争形態の変化により軍隊建設に新たな要求がつきつけられた。時代の必要に応じて、解放軍は機械化、半機械化から情報化軍隊へと転換しつつあり、それには同様に大量の軍事費投入が必要であった。(3)軍事費支出が補償期に入った。1998年以来、軍事費支出GDP比の低下傾向に歯止めがかかり、軍人待遇が向上、兵器装備はバージョンアップが進んだ。しかしこうした補償はやはり低いレベルのもので、ここ数年の平均指数では、中国の軍事費予算はGDPのわずか1.5%未満(国際的一般レベルは3%)、国家年財政支出の8%未満であった。国民1人当たり軍事費負担あるいは軍人平均支出で見てみると、中国の順位はさらに後ろになり、ラテンアメリカ諸国やアフリカ諸国にすら及ばない。
要求に従い、中国の軍事費予算は国家財政予算草案に組み入れられ、全人代に提出され審議の上で可決される。審議の過程は透明なものだ。中国国防白書では国防費の総額、構成、毎年増加分の主要用途を含む管理使用状況を全面的に公表しているが、その目的は外部の軍事費への疑念を払拭することだ。2007年に国連軍事費支出報告制度に復帰した後、中国の軍事費透明度はさらに高まった。これは、中国が世界各国との軍事相互信頼増進に努める態度を表している。
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