◇「富士山噴火の前兆では……?」◇
中国東方航空の成田―南京間に就航しているMU776便は、日本と中国を往復する際お世話になっているが、富士山のほぼ真上を通過するので毎回楽しみにしている。今回は天候もよくはっきりと見えた。
東方航空MU776便から見下ろす富士山の雪肌は中腹までだった
「おおっ!富士山の真上を通過しているんだ」日本人乗客が歓声を挙げて窓の外を見ていた。3776メートル。日本で標高がもっとも高い山で日本のシンボルだ。陸上からは常に見上げる山だが、機上から見下ろす富士山は、火口が笑窪か小さくつぼめた可愛いおちょぼ口のように見える。雪肌は中腹までしかないようだった。今年の冬は日本列島の各地で大雪に悩まされているのに、日本一高い富士山に雪が少ないのはなぜなのだろう、と気になった。
東日本大震災以後、富士山麓の周辺では、民家の庭先から温泉がわき出たり、「幻の湖」が7年振りに出現したりしている。昨年3月11日の東日本大震災の4日後には、富士山のほぼ直下でマグニチュード(M)6・4の地震があり、今年1月28日にもM5・4の地震があったばかり。今年は富士山の雪が例年より少ないことなども加わり、地元の人たちは「富士山の噴火の前兆ではないのか」との不安が高まっている。
これらの不安に応える形で、2月9日の毎日新聞「特集ワイド」が、火山研究者らの話を掲載していた。
それによると、異常現象や「幻の池」出現は、「昨年9月の台風による大雨がしみ出てきたものであること」「富士山に雪が少ないのは、強い偏西風の吹く日が多く、雪が吹き飛ばされたため」などと研究者が解説している。火山活動と密接なかかわりのある「低周波地震」が増えていないことからも、「富士山の噴火警戒レベルは5段階の最低であるレベル1(平常)」だという。
記事とは別に、1900年以降、世界でM9以上の地震と周辺の火山噴火を表にしていた。1952年のカムチャッカ沖地震(M9・0)では翌日にカムチャッカ半島で噴火したケースから、2004年のスマトラ沖地震(M9・1)では3年以内にスマトラ島や周辺島で4つの火山が噴火するなど4回の大地震後の噴火を示し、2011年の東日本大震災後の噴火には「?」をつけている。「富士山が静かな間こそ、火山防災・震災の手立てを考えておくべきだろう。」と結論づけていた。
スズメも富士山も異変を冷静に分析し、事前に必要な対応策を立てることが肝要なのだと思う。南京の専家楼に戻り、窓辺で忙しくパンを啄むたくさんのスズメたちを見て、日本の仲間に何かが起きていることをなんとか伝えたいと思った。 (写真はすべて筆者写す)
「北京週報日本語版」2012年3月1日 |