ぬぐえない懸念
しかし、こうした原発許認可再開を控えた敏感な時期に、中国国内で原発建設反対の論争が起きている。
2月7日、『江西彭澤原子力発電所の建設中止請求に関する報告』という政府文書の複製がネット上で注目され、大量に転載された。この文書は原発建設が予定される江西省の隣にある安徽省の望江県政府が発したものだった。
この『報告』は、江西省九江市彭澤県にある彭澤原子力発電所プロジェクトは事前作業に問題があり、原発建設にはリスクが存在すると指摘、彭澤原発建設を取りやめるよう要求するものだった。
彭澤原発は2年前に建設が認可されているが、昨年の福島第一原発事故後に国務院から建設中断の指示が出ていた。この彭澤原発について、安徽省望江県は「原発が建設されれば住民の安全が危険にさらされる」と主張したのだ。
安徽省望江県政府が反対を表明したため、ほとんど注目されなかった江西省彭澤原発が脚光を浴びることになった。中国科学院アカデミー会員の何祚庥氏も安徽省望江県の反対を支持している。何祚庥氏はメディアで内陸地域の原発建設に反対する文章を発表し、干害による冷却水不足や内陸部原発の河川汚染などの問題に言及している。
放射線防護と環境保護専門家の潘自強氏は「これは原発が安全かどうかを人々が依然心配していることの表れだ」と言う。「安全面と原子力安全基準の角度から言えば、内陸地域の原発も沿海地域の原発も全く変わらない。彭澤原発は比較的いい場所にあり、原則的に安全性の問題はない」。
潘自強氏はさらに続ける。「中国の『原子力発電所環境放射線防護規定』は、原子力発電所の建設地の適正さ、地質、地震、水利、気象、交通運輸、土地と水の利用、周囲の人口密度、自然・人為的外部事件、各種廃棄物・燃料、使用済み核燃料の保存輸送方法などについて詳細な要求を行っている。彭澤原発は長江沿岸にあるが、長江は水量が多く、希釈拡散力も優れている。長江流域がダメなのあれば、他の内陸地域における原発建設は論外だ」。
現在、中国の許認可取得済み原発は43カ所、計画容量は2億キロワット近い。これらの原発は16の省に分布しているが、江西省や安徽省など8つの内陸の省もその中に含まれている。
望江県の反対が彭澤原発の建設を阻止できるかどうかは、今のところまだ分からない。しかし環境保護部から伝わってきた情報によると、内陸地域の原発が技術と安全性の面で比較的大きな論議を呼んでいるため、今後の新規プロジェクトについては当面内陸地域の申請は考えていないという。
「北京週報日本語版」2012年2月27日 |