◆経営拡大で「禅茶一味」をさらに発揚
明清時代の雰囲気がただよう
牡丹園店の成功で露雨軒は名を馳せたが、同時に問題も。それは満席になった時のこと。「茶楼はレストランと違って、お客さんは飲み終わってもすぐには去りません。いつ帰ってくれるのか分からないのです」
この問題を解決しようと、露雨軒は適度に値上げすると共に、近くにある双秀公園の北門に新規に開業。入り口にあるのは精緻なデザインの「方生池」。鯉が泳ぎ回る。店内はまさに仏堂そのもの。屹立する3尊の大仏に仏教彫刻が飾られている。精緻な清朝の木彫「釈迦牟尼全仏図」、「如来説法図」、造型が質朴な明代の金糸楠木彫塑「十八羅漢」など。
双秀店では古色蒼然とした椅子、磁器が置かれているほか、明清時代の精美な枕もとを利用して特色あるブースが作られている。中国式、タイ式など仏教を感じさせるブース。そして蘇州風、広州風、清朝風の家具。文化的な色合いが濃く、どれもが仏教と関係がある。ブースの名は釈迦牟尼の言葉から引用されている。「真誠」「清浄」「平等」「正覚」「慈悲」「看破」「放下」「自在」「随縁」「念仏」など。
「博物館のようではなく、収蔵品をただ並べて、ただ見ていただければ。別に意味あることだとは思っていません。家具は古いものですし、お客さんが自由に座ってもいいし、壊れても構いません。修理できる木工がいますから。精魂込めてこの茶楼を築きました。命が長らえるよう、茶楼がいつまでも長く続くよう、この骨董品が価値あるものになればと」と張さん。
張さんにとって、お客さんへの願いとは。「目・耳・鼻・舌・身・意」、この仏教という概念にある「六蝕」を感じてもらうこと。目で素晴らしい家具や装飾を眺める、耳で麗しい音楽を聞く、鼻でいろいろなお茶の香りや仏の雰囲気に酔う、舌でさまざまな口に合った銘茶やお菓子を味わう、身をもって明清時代の古い家具に直接触れる。そうすることで、それまで経験したことのない境地に達することができるのだと言う。
張さんによると、お客さんの70~80%の人が仏教文化に興味があって訪れるそうだ。仏教は「殊途同帰」(方法は異なっても結果は同じ)を重視しており、茶楼には多くの宗派が融合されていても、ある宗派をとくに目立たせているところはない。露雨軒は定期的に仏教文化や国学の講座を開催しており、国内外から多くの文化人が参加している。「ここの雰囲気は素晴らしい。お茶と仏教という文化が非常に融け合っています。よく足を運んで友人と談笑していますよ」と趙さんは話した。
面白いことに、露雨軒は仏教をモットーにした茶楼でありながら、従業員は必ずしも仏教を信仰していないのだ。張賛さんが提唱する「殊途同帰」を説明しているのかも知れない。
「北京週報日本語版」2012年2月23日 |