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手帳大国から見る日本人像

 北海道大学文学研究科大学院 博士課程1年・周菲菲

日本の書店や文房具店では、毎年、年末・年始になると、新しい日記や手帳が店頭に並ぶ。「春節」が1年の始まりだった中国とは異なり、日本では新暦の元旦が1年のスタートになる。この時期になると、手帳コーナーで沢山の人が手帳や日記を手に取り、真剣に選んでいる日本ならではの風景が見られる。2006年には12月1日が「手帳の日」と制定されたほどだ。

私は日本に留学して1年間あまりになるが、とくに手帳コーナーが気に入っている。日本人の手帳に対する好みはとても独特なものであり、そこから色んな面白い日本人像が垣間見える。

日本人はだれでも手帳を活用

私は日本に留学に来るまでは、手帳を持つことはなかった。中国では手帳を利用する人は極めて少ない。面倒なのか手帳を使う習慣は殆ど無い。年配者は手帳をあまり持たず、用があれば、仕事場や家の机の上にあるカレンダーに書き込む。サラリーマンや学生は、便箋や携帯のスケジュール機能を好んでいるようだ。

ずらり並んだ手帳コーナー(2011年12月29日、札幌中央区南1条大丸藤井で)

ところが、日本に来て驚いたことに、年齢や性別、職場を問わず、日本人の誰でも自分なりの手帳を活用しているようだ。知らぬうちに私も「郷に従い」、手帳を持つようになった。日本人と接触していると、手帳を持たなきゃ、という緊迫感に攻められるからだ。

手帳の必要性は、時間に対する一種の緊張感から生まれたものだと思う。それは日本人と打ち合わせ等をするときに、特に実感する。私が初めて日本人の時間感覚に感心したのは、来日して2カ月後のことであった。ある日、突然日本人の先輩から食事の約束のメールをもらった。嬉しく内容を見ていると、日にちはなんと、1カ月も後のある日だった。「そんな1カ月も後のことなんか、わからないじゃないか」と思いながら、私はシールに食事の日を書いて机に貼った。

それから周りの日本人を観察していると、大学院のゼミが休講になるときや、バイト先で1カ月半後の忘年会の日程を相談するときも、私のところで中国語レッスンを受けている日本人の生徒が次回のレッスンの日時を予約するときも、友人とショッピングや温泉に行くと決めるとき等でさえ、どれほど些細なことでも、皆真剣にカバンから手帳を出してチェックし、互いの都合を確かめながら決めることに気づいた。家族で集まって一緒にバーベキューや花見に行くためにも、全員それぞれの手帳で日程を調整するという話も聞いた。

その時私は、仕事の予定を大事にする気持ちは分かるが、娯楽などに対してそれほど真剣に考えなくてもよいのではないかとも思った。中国にいたとき、友人とショッピングすることや、同級生と食事をするぐらいのことなら、即時に決める場合が多かった。特別な祝日でない限り、2週間を超えるような約束をした覚えもなかった。そういう「即時性」には不安定な要素があるが、その時の気持ちに従うという楽しみも失うのではないかと考えた。

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