時永明(中国国際問題研究所国際研究室副研究員)
年末も間近に迫り、人々が1年を総括し来年の計画を立てる時期になって、朝鮮から突然驚愕のニュースが伝わってきた。朝鮮の指導者である金正日総書記死去。一時人々の目はほとんどこのニュースのみに集中したかのようだった。巷はこの話題で持ち切りになり、一部の国の首脳も電話でコミュニケーションを取るのに忙殺された。憂慮からか、もしくは何かが起こるのを期待したからかは分からないが、韓国は非常警戒態勢2級に入ることを宣言した。
1月17日、胡錦濤国家主席は朝鮮労働党総書記・国防委員会委員長の金正日氏を案内して中国農業科学院作物科学研究所を参観した(新華社)
胸に抱く思いは人それぞれ違っていたとはいえ、誰もがおそらく同じことを考えていただろう。それは、「朝鮮は今後どうなるか」だ。若き後継者は混乱に満ちたこの国を苦境脱出へと導くことができるのか、そして地理関係による政治・国際関係上のあつれきの渦中にはまり込んだこの国が今後地域の安定にどのような影響をもたらすのか。人々は朝鮮の今後について懸念を抱いている。
安定が主旋律に
あれこれと騒がしく取りざたされてはいるが、実はその中である言葉が頻繁に使われている。「安定」である。人々は朝鮮の権力継承が安定して行われることを望むと同時に、朝鮮が今後地域の安定促進の上でプラスの役割を果たすことも望んでいる。
朝鮮と国境を接する隣国として、中国は最も朝鮮の安定維持を望んでいる。「金正日死去」が発表された後、中共中央はすぐに朝鮮へ弔電を打った。20日午前、胡錦濤主席と呉邦国氏、李長春氏、習近平氏ら指導者が朝鮮駐中国大使館を弔問し、金正日総書記の死去に対し哀悼の意を示した。こうした動きは朝鮮に向けて次の2つのメッセージを伝えるものだった。1つは金正日総書記への哀悼と追懐、2つめは中国が中朝の伝統的友好協力関係を堅固なものとし発展させるというこれまでの方針を堅持し、中朝双方がこの伝統的友好協力関係継続のために共に努力することを望んでいるというメッセージである。
中朝間の友好協力関係が半島の平和と安定維持に非常に重要な意義を持つことは、これまでの歴史が証明している。中国が朝鮮に向けて伝えたメッセージも「朝鮮のスムーズな権力継承と半島の長期安定を望む」という非常に明確なものだった。
朝鮮としても、安定を維持する上で現実的な政治基盤の支えがある。実際、金正日総書記の死は突然だったものの、存命中すでに死後について周到な準備が行われていたため、権力の空白や断裂は起こらず、権力継承も自然かつ平穏に行われた。新しい指導者はまだ若いが、指導グループは経験豊富で、極めてしっかりしている。後継者とそれを支える陣容が完全かつ系統的であることは、継承の安定性を保証するはずだ。また新しい指導グループとしても、安定した国内環境の下で内部関係を整理し、落ち着いて国の前途を計画することを必要としている。したがって、今後しばらくの間は「安定」が主旋律となるはずだ。
|