【特徴4】
従来からの安全保障問題とそれ以外の新たな安全保障問題が同時につきつけられ、国際的な安全保障環境は厳しさと複雑さを増した。従来からの安全保障問題には主に次の3点がある。(1)一部地域で衝突が絶え間なく発生している。中東・北アフリカの激しい動揺は西側強権政治の台頭と軍事干渉を招いた。NATOの武力介入でカダフィ政権が倒され、米国の「スマートパワー外交」が首尾よくいった。アフガニスタン戦争は10年目に入り、米軍無人機が再三パキスタン領内に入って攻撃を行っており、アフガニスタンとパキスタンの安全が低下している。(2)多くの国が新たな軍事装備の研究開発に力を入れ、ハイレベルな国際軍事競争が展開されている。米国は財政危機も顧みず先進兵器の開発・配備・応用を推進し続け、軍事霸権を極力維持しようとしている。ロシアは欧州弾道ミサイル禁止問題で米国と論争を繰り広げている。(3)サイバースペース戦略をめぐる戦いが激化している。米国はサイバースペース『国際戦略』と『行動戦略』を発表し、サイバースペースを陸、海、空、宇宙と並ぶ「行動領域」とみなして攻撃防御体系構築を強化し、ルール決定権を主導することを企図している。
従来とは異なる新しい安全保障問題も主に3つある。(1)巨大天災が頻発し甚大な損害をもたらした。日本の「3•11」巨大地震・津波で深刻な放射線物質漏れが起き、世界の産業チェーンに打撃を与えた。原発の安全リスクに注目が集まり、多くの国が核エネルギーの放棄を検討したことで、国際的なエネルギー需給局面が調整に直面している。(2)テロとの戦いが新たな段階に入った。米国は「9•11」10周年前後に「アルカイダ」組織の頭目ビンラディンとアウラキを相次いで射殺したが、西側諸国に「現地化」したテロリズムの脅威は依然深刻である。南アジアはなおテロリズムにより甚大な被害を受けている。(3)リビアのカダフィ政権は核兵器計画を自ら放棄したものの、西側によって武力で打倒された。これにより、朝鮮・イラン核問題の硬直局面の打開がさらに難しくなった。
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