【特徴2】
世界規模の社会政治抗争の波が再三起こった。国際金融危機の「スピルオーバー」(波及)効果が際立ち、中東・北アフリカと欧米の2つの地域で社会政治危機が誘発された。中東・北アフリカ諸国では「革命」が勃発し、チュニジア、エジプト、イエメンで政権交代があった。西側列強はこの機に乗じてリビア内戦に干渉し、カダフィは非業の死を遂げた。またシリア当局の内外圧力が高まった。中東の政治情勢と権力構造が激変し、親米勢力が衰え、イスラエルはさらに孤立、トルコとイランの影響が増大した。金融危機も欧米社会の矛盾と過激思想の台頭を引き起こした。ノルウェーの過激分子が大量殺人を犯し、ロンドンでは爆発騒乱事件が発生、米国では「ウォール街を占拠せよ」を合言葉にしたデモが全国に広がった。
2011年は「世界が怒りに満ちた年」であり、今世界に存在している3つの社会矛盾が浮き彫りにされた。(1)貧富の二極分化。金融危機により中産階級の財産が減り、庶民に強い被剥奪感が生まれ、鬱憤を吐き出すために抗争に走りやすくなった。例えば、「ウォール街を占拠せよ」を合言葉にしたデモの対象は米国金融資本と不平等だった。(2)グローバル化、情報化、公平化が大勢の向かうところとなり、硬直化した従来体制の継続が困難になっている。中東・北アフリカの「強権政治」と「権力者一族による国の重要ポスト占有」が破綻し、欧米の「権貴民主」の積もりに積もった古くからの弊害が表面化した。その上ネットワーク新メディアや非国家行為体が騒ぎ立てることもあって一国の動乱が他国に伝わり広がりやすくなった。(3)人口構造と就業・雇用構造の不均衡による世代間・階級間矛盾の激化。世界の人口が70億を突破し、若者の長期失業が普遍的現象になり、「怒れる若者たち」が世界的な難題になった。
2012年の展望:
中東・北アフリカの政治体制変動があった国々の再建任務は重く、国内外の各勢力も依然複雑な競争を繰り広げると見られ、「新中東」は変数に満ちたものになるだろう。また欧米社会の対立も再び激化する可能性がある。
2011年9月13日、スペインの首都マドリードで、×印のついた1ユーロコインの図柄の前を通りすぎる人々 (ロータス)
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