陳向陽(中国現代国際関係研究院世界政治研究所副所長)
2011年は国際金融危機の「余震」が絶えず、国際情勢では「乱」、「変」、「険」といった現象が際立った。各地で情勢が混乱し、変化が激しく、危険な兆候に取り囲まれたような1年であった。こうした現象を通して本質を見てみると、その背後にあるのは、国際秩序の新陳代謝が行われ転換期を経て新たな秩序を生み出すための「陣痛」である。
【特徴1】
先進国経済の冷え込みと発展途上国経済の好況とが同時に進行し、欧米ソブリン債務危機により世界経済の回復が妨げられた。欧州だけでなく米国でも債務危機が発生。米国は債務上限を2兆1000億ドルに引き上げて債務不履行を回避したが、米国債信用は初めて格下げされた。欧州債務危機は引き続き悪化し、危機対応の「集団行動」は遅れ、効果が低く、無力だった。欧米経済が困難を脱するには財政緊縮と福利削減が急務だが、与野党の対立と民意の不満に制約され、経済成長は力強さを欠いた。IMFは先進経済体の2011年成長率をわずか1.6%だとしている。
一方で世界経済回復を支える「新鋭軍」になったのが新興経済体だ。新興経済体は旺盛な内需と途上国どうしの「南南貿易」などにより比較的高い成長を実現し、今年の成長率は6.4%を実現、中国はさらに高く9%以上に達すると見られる。新興経済体の頑張りにより、世界経済は「二番底」を回避することができた。IMFは2011年の世界経済成長率を4%としている。しかし、先進経済体が自国の利益を優先して金融緩和政策を進め、保護主義によって危機を対外転嫁したため、新興経済体に圧力が加わっただけでなく、巻き添えを食って成長が鈍化した。
2012年の展望:
世界経済回復には不確定性が満ち、先進経済体は低成長、発展途上経済体は高度成長という「二速成長」状態が続くだろう。
2011年10月23日、リビア東部の都市ベンガジで、新国旗を振りながら全国解放を祝うリビアの人々 (AFP)
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