承啓楼には江姓の人が多く住んでいる。建物の直径は71メートルあり、4階建てで、四重に円楼が建っており、全部で400部屋ある。最も多い時は、80世帯余り600人以上が住んでいた。一方、振成楼には林姓の人が多い。建物の直径は51メートルで、一番外側の4階建て円楼は各階に40部屋、合計160部屋あり、内側の2階建て円楼は各階に12部屋、合計24部屋ある。振成楼全体で14世帯70人余りが住んでおり、学会員や官僚、学者や商人などを多く輩出している。
振成楼に住む林日耕さんは60歳を越えているが、身体はとても健康だ。日耕さんは林家の7人兄弟の末っ子。兄や姉たちは国内外に散らばっており、父親は日耕さんを手元に残して家業を継がせ、農業に従事させた。観光客に土楼の説明をしている日耕さんは、テレビやラジオに出演したり、新聞に載ったりしたこともあり、今では土楼の魅力を解説するガイド的存在だ。日耕さんは自分の運命、一家の運命、振成楼に住む人々の運命を土楼と重ねあわせ、情感たっぷりに活き活きと語る。
「振成楼には、子供が生まれた時の胎盤を1階の敷居の下に埋めるという慣わしがあります。そして子供が成長すると、家長が『ここがお前のルーツだ。だからどんなに遠く離れても、土楼は永遠にお前とともにある』と言って聞かせるんですよ」。
日耕さんによると、福建の土楼には見どころが2つある。1つは建築構造、2つめは文化様式だ。土楼に住む人々は戦乱を避けて山奥に逃れ、独特の建築様式を作り上げた。上部が小さく下部が大きい構造で、厚さ1.3~1.5メートルの土壁が盗賊の侵入や地震・風の被害を防ぐ。文化は土楼の奥深くに息づいている。土楼には多くの対聯があり、それが直接文化伝承の役割を果たしている。
現代都市がセメントの森に沈み、文化的特徴が日増しに薄れつつある今、福建土楼はその豊かな創造力と巧みな建造技術で、世界各地からの観光客を引き付けている。私たちが土楼を見学している間にも外国人観光客がひっきりなしにやって来たことが、それを最もよく物語っている。
福建省漳州市華安県仙都鎮大地村にある二宜楼は清の乾隆35年(1770年)に建造された円形土楼。最初に省級文物保護単位(重要文化財)に指定された円形土楼で、「神州第一楼」などの別名を持つ (姜克紅撮影)
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