陸彩栄(中国外文出版発行事業局副局長)
「閩西」と呼ばれる福建省西部の山岳地帯に、外部から立ち入りができない閉鎖型の住居が数多く残されている。円形、方形、五角形、さらには八卦をかたどったものなど形状は様々だが、いずれも土を何度もつき固め、竹や木の板などを加えて建造されているため、土楼と呼ばれている。
土楼に住んでいるのは、河南や山西、陝西など中原各地から戦乱や飢饉を避けて移動してきた漢族の人々である。そのため彼らは客家人(「よそ者」の意)とも呼ばれている。客家人の祖先は西晋から清代にかけて計5回にわたる大規模な南遷を繰り返して現在の場所に移動して来たため、昔の習慣や古い風俗を多く残している。客家人はその後も新たな生存空間を探し続けて世界へと飛び出し、現在1億人以上が世界各地に暮らしている。
2008年、永定と南渓を主とする福建土楼はユネスコの世界文化遺産への登録を申請した。その独特の建築設計、見事な創造の智恵、色濃く残る東洋文化は世界各国の専門家や審査員をたちまち魅了し、世界文化遺産として登録された。これにより、福建土楼は一気に世界にその名を知られるところとなった。
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