大地震被災者の声を記録した『大津波のあとに』
3日午後には、東日本大震災発生2週間後に仙台、東松島、石巻などの被災地を撮影した『大津波のあとに』が上映された。同作品では、児童108人中74人が津波に飲まれてしまった石巻大川小学校を中心に、特に被害の甚大だった石巻市の被害の様子を撮影する同時に、被災者にも多数インタビューを行い、震災後の被災地状況を記録し、被災者の生の声を拾った。
上映後の森元修一監督のトークセッションでは、作品制作の動機や撮影時のエピソードなどが披露された。撮影の動機について森元監督は、「3月11日以降、日本は変わってしまった。変わらざるを得なかった。これまでの日本人の価値観を変えて新しい世の中を作らなければいけない時期に入ったと思うが、どうすればいいのかはまだ誰も分からず、迷いの中にいる。だからこそ直感的に3月11日に何が起きたのかということを撮っておかなければいけないと思った」と語った。
観客からは「親しい人を亡くしたやるせなさと助けられなかった後ろめたさを感じた」と共感が述べられる一方で、「中国の四川大地震では、自分を助けずに逃げてしまった夫を妻が恨みに思って地震後に離婚率が上昇し、大災害が人の感情や人生観に衝撃を与えてしまったが、日本ではどうだったか?」との質問が出された。これに対し森元監督は「実際、夫や妻の違う面を見てしまって離婚したケースもあったと聞いているが、一方で家族がいるからあれだけのことがあってもまた頑張ろうと思えるようになると考えて結婚する人たちも増えている」と回答するなど、大地震が社会や人々の人生観、価値観に与えた影響について交流が行われた。
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