梅新育(商務部国際貿易経済合作研究院副研究員)
ユーロ圏ソブリン債危機の中国への波及は主に貿易関係、為替リスク、通貨安競争などを通じたものだが、分析の結果では、今回のユーロ圏危機の中国への衝撃は致命的というほどではない。しかし、その欧州社会への長期的影響は過小評価できない。
2011年12月6日、ベルギーの首都ブリュッセルで、「europa」と書かれた窓に映るEUとユーロのマークつき垂れ幕(周磊撮影)
貿易関係
直接需要効果とは危機により財政危機国家の輸入需要が減少することである。2009年の中国の輸出総額は1兆2016億6300万ドルで、うち対EU輸出総額は2362億8400万ドルだったが、対PIIGS(ポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペイン)輸出は416億7700万ドルで、この年の中国輸出総額の3.47%、対EU輸出総額の17.64%だった。
これに対し2010年は、中国の年間輸出総額が1兆5779億3225万2000ドル、うち対EU諸国への輸出は3112億3542万3000ドルだったが、対PIIGS輸出合計は577億8051万5000ドルで、輸出総額の3.7%を占め、対EU輸出では18.6%だった。上記のデータから見て、イタリアやドイツ、フランス、英国などEU経済大国が崩壊しない限り、ユーロ圏危機の中国輸出需要に対する直接減少効果はそれほど大きくはないと見られる。
しかも、上記の財政危機国家や財政危機に陥りそうな国への輸出のうち、かなりの部分は中継貿易か(特にギリシャとイタリア)、観光客による消費(特にスペイン、ポルトガル)である。危機によってこの部分の需要が直接減少することはないだろう。
その一方で、財政危機に陥っていないEU諸国に間接的な需要減少効果が見られる。これらの国は巨額の財政資金を拠出して財政危機国家支援に加わっているため、その分国内需要が減少しているのだ。特に一部の消費財需要が減少するだろう。しかしこれらの国自体が危機に陥らない限り、こうした間接的な需要減少はそれほど大きくはならないはずだ。
このほか、ユーロ圏ソブリン債危機の中国輸出産業への打撃緩和に役立つと見られる要素が2つある。
まず1つ目は、国内市場が巨大であることだ。1970年代以来、中国国内卸売・小売市場の対輸出規模は全体的に縮小に向かい、1972年は輸出総額の11.74倍相当だったが、翌年には8.46倍、2007年には81%まで下がり、建国以来最低となった。しかし2008年からはこれが逆転した。2009年の中国の年間社会消費財小売総額は12兆5343億元に達し、そのうち貿易可能品の卸売・小売業はその年の中国貨物貿易輸出総額の128%に相当、中国国内卸売・小売市場の対輸出規模は再び100%以上になった。2010年、社会消費財小売総額の価格要素を排除した実質成長率は同期比14.8%となり、消費財小売総額は15兆6998億4000万元にまで達した。
2つ目は、中国の経済発展レベルが低く、国内産業の資産専用性が低く、適応性が強かったが故に、多くの輸出製品生産企業と労働力が国内市場向けの別の製品の生産に転じやすく、国内総需要の拡大に適応してすぐに生産方向の転換ができたことである。こうした状況下で、多くの企業が国内市場を開発することで外部からの打撃をうまくやり過ごすことができた。
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