本誌日本語専門家 勝又あや子
輸出投資主導型から内需主導型への産業構造転換を目指す中国にとって、交通網や港湾設備など、内需主導型経済成長の基盤となるインフラの建設は極めて重要だ。それを支えるのが鉄鋼や石油化学といった重化学工業産業。そして天津濱海新区とともに重化学工業産業集積地として位置づけられているのが、環渤海経済圏である。そのうち河北省の産業開発拠点を訪ねた。
将来性抜群の「黄金の宝地」:唐山・曹妃甸工業区
最初に訪れたのは、唐山市南部沿海地区に建設が進む曹妃甸工業区。環渤海経済圏の新たな重化学工業産業集積地として大きな期待が寄せられている。曹妃甸の名は、唐の太宗李世民が東征した際この地で病没した曹妃を祭った曹妃廟に由来する。ここはもともと陸地から18キロのところにあった帯状の砂の島だったが、陸側の浅瀬を埋め立て、計画総面積380平方キロという広大な工業団地を造成している。
曹妃甸は恵まれた地理条件と高い将来性から「黄金の宝地」と呼ばれている。工業区の最も海寄りにある曹妃甸島の前に広がる海は、沖に500メートルも行くと水深25~36メートルの渤海湾最深部に達し、25万トン級船舶の航行が可能。一方陸地側は干潮時には露出する浅瀬で、埋め立てに向いていた。さらに、地下には埋蔵量10億トン以上の大油田が発見されており、石油化学工業発展の基盤としても有望だ。天津まで120キロ、秦皇島まで70キロ、北京までは220キロという大都市との近さも魅力だ。海路なら距離はさらに縮まる。
曹妃甸実業有限公司の王玉軍部長によると、工業区の計画総面積は380平方キロ(うち埋め立て地は200平方キロ)で、シンガポールの2分の1に相当する。計画中の南堡開発区、唐海県・唐山湾エコシティなども含めた曹妃甸新区の総面積は1900平方キロ以上、シンガポール3つ分になるという。2005年から6年の建設を経て、交通や水道、電気、埋め立てなどインフラはほぼ整った。
曹妃甸は現代港湾物流、製鉄・電力業、化学工業、設備製造業、ハイテク産業の集積地として開発が進んでいる。工業区内では25万トン級鉄鉱石埠頭、原油埠頭、石炭埠頭、コンテナ・バラ積み船用埠頭などがすでに稼動しており、2010年の年間荷扱い量は1億5000万トンに達した。王玉軍部長は「1億トンを実現するのに秦皇島は100年かかったが、曹妃甸は5年しかかからなかった」と胸を張る。将来は年間荷扱い量5億トンの世界最大級港湾設備を目指す。
25万トン級船舶の接岸が可能な鉄鉱石埠頭輸入用埠頭
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