本誌日本語専門家 勝又あや子
経済発展モデルの転換が叫ばれ、国ぐるみで文化産業の発展を推し進めている今、工業・資源型都市として知られる唐山市も文化産業の推進に力を入れている。唐山市の文化産業推進状況を取材した。
唐山市は北京から北東に約150キロの位置にあり、北は燕山、南は渤海に面している。総面積は1万3472平方キロ、人口は735万人。河北省の中心都市であり、経済の中心である。
唐山市が文化産業発展計画において具体的かつ重点的に取り組んでいるのが十大産業チェーンの構築だ。十大産業チェーンとは、工業文化産業、歴史文化産業、紅色(社会主義革命)文化産業、生態文化産業、地域文化産業、地震文化産業、展示会文化産業、創意設計文化産業、印刷包装文化産業、観光レジャー文化産業のチェーンをいう。今回は、このうち工業文化産業、生態文化産業、地震文化産業を代表する取り組みを視察した。
◆工業文化産業:開灤国家鉱山公園◆
唐山というと鉄鋼や石炭、基礎エネルギー、セメント、陶磁器などの工業が発達した工業都市のイメージが強い。唐山市では、その特色を生かして工業文化産業を推進していこうとしている。その代表が開灤国家鉱山公園だ。
130年余りの歴史を持つ炭鉱を利用した開灤国家鉱山公園
この公園は李鴻章の指示により1878年に設立された開灤炭鉱(当時の名称は開平炭鉱)をベースに作られている。開灤炭鉱は中国初の機械による採鉱や石炭の鉄道輸送が始まったところで、中国初の標準軌道鉄道の起点や中国初の蒸気機関車、現存する中国で最古の株式、100年以上前に手書きで記帳された羊皮紙の帳簿など、中国の100年来の工業発展を象徴する貴重な遺産を有し、「中国石炭工業の生きた化石」の異名を持つ。歴史ある炭鉱を利用した開灤国家鉱山公園は、一世紀余りにわたる工業遺産を文化産業へと転換したと言えるだろう。
開灤国家鉱山公園は唐山市政府の主導の下、開灤集団公司が運営している。オープンは2009年で、中国北方近代工業博覧園、老唐山風情小鎮、開灤現代鉱山工業モデル園からなっている。今回取材したのは中国北方近代工業博覧園の中にある開灤博物館。この博物館では、石炭の出来る過程、古代の採掘法などを含めた炭鉱の歴史、洋務運動による民用工業発展などを、豊富な展示品と立体的で体験型の展示方法によって、非常に分かりやすく、かつ印象的に展示している。実際に地下の炭鉱跡地を体験できる「井下探秘遊」というアトラクションや、工場跡地を利用したマジック劇場「魔力地帯(マジックエリア)」などもオープン予定だ。
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