資金ショートはなぜ起きたのか?
信泰集団は温州眼鏡業界のトップ企業で、銀行の与信評価がAランクだったこともある優良取引先だ。
胡董事長がメディアに語ったところでは、以前は多くの温州の銀行頭取が融資させてほしいと頼み込んできたという。これが胡氏の新エネルギー参入計画を直接たきつけることになった。
2008年末、胡氏は中硅科技と共同で太陽光発電に投資した。信泰集団の会社ホームページによると、2011年には600メガワットを発電し、年間生産能力は70億元に達する計画だった。信泰はこの事業に一気に6~7億元を投じた。
しかし3年近くすぎても、太陽光発電は信泰集団に見返りをもたらさなかった。
「この2年、太陽エネルギーへの投資が盛んにもてはやされ、国内の多くの資金が新エネルギーにどっと投じられたため、ひどい生産過剰を招いた」。甌海高新区管理委員会企業管理部の伊秀新主任はこう語る。特にユーロ債危機が激化した後、国外経済情勢が悪化し、政府も補助金を打ち切ったため、太陽光発電製品価格は暴落し、業界全体が赤字となってしまった。新エネルギーへの投資は不利な局面を迎え、こうした中で借入金は胡氏の悪夢となった。
今年、インフレ対応で銀行が経営を引き締めたため、胡氏はより金利の高い民間金融からの借り入れに転じざるを得なかった。
胡氏が逃亡した後の数日間に、信泰は中原会計師事務所に資産清算を依頼した。その結果、信泰の負債総額はおよそ13億元、そのうち高金利業者からの借入金が3~4億元あり、残りの8~9億元が銀行借入金であった。
甌海高新区管理委員会の魯汝慶副書記はメディアに対し、返済期限を迎えた銀行借入金1400万元が信泰集団の命取りになったのは、借金返済に充てる資金が借りられず、二重の圧力がかかって資金ショートを起こしたためだと語った。
温州では、多くの企業が信泰集団のような資金難に陥っている。北京大学国家発展研究院は2011年6月下旬~7月上旬に温州を含む浙江省7都市の小企業94社、専門市場4市場、現地の銀行12行に対し訪問調査を行ったが、その結果、半休業または休業になっている企業が約18.63%あり、稼働率が90%以上を保っている小企業は4割前後だった。
温州市の企業の多くは中小企業で、必要な担保がなく保証人もいないため、商業銀行から十分な額の融資を受けることができず、民間金融から高利の資金を借り入れざるを得ない。今年に入ってから、マクロ調整を背景に、温州の民間金融は空前の活況を呈し、上半期は民間高利金融からの貸付金が累計485億5000万元となり、金利は銀行の数倍、ひいては数十倍に上った。
企業の生産周期と決算周期の多くは1カ月より長いため、人民元高が続く今、多くの輸出型小企業は長納期注文や大口注文を受けることを躊躇している。また顧客を守る目的から、レート変動圧力が高くても製品販売価格の上がり幅を低く抑えているため、利益幅はさらに狭まっている。
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