◇母スズメに学ぶ教育の本質◇
専家楼窓辺のサンクチュアリは、夏休みで日本に一時帰国し、1カ月間ほど留守にしていたが、竹を割ったエサ台にパンくずを入れてやると、スズメたちがすぐにやって来た。「どこに行ってたんだい。随分長い間いなかったじゃないか」というような表情で時々、室内を覗き見する。母親が巣立ったばかりの子スズメを連れていた。今年2回目の子育てだ。スズメは2週間ほどの抱卵で孵化する。その後親は2週間余り、ひっきりなしにエサを巣に運び、ヒナを育てる。1カ月ほどで巣立ちをするから、7月下旬から8月にかけて生まれた子供たちだろう。
「ほらほら、パンですよ。たくさん食べてね」 今年2回目の育児に忙しい母スズメ
初夏の時と同様、子スズメは「チィチィチィ」と鳴きながら、翼を小刻みに震わせて親にエサを催促している。エサは足元の竹筒を割った中にあるのだから、自分でついばめばいいのに、甘えているのだろう。親もしきりにパンを何回も子スズメの口に運んでいた。好奇心旺盛な学生の疑問や質問に、根気よく丁寧に教える必要がある教育の本質を、この母スズメは私に教えているように思えた。
「わーい、離陸だあ、一緒に飛び上がろう」
初夏に誕生して成鳥となったスズメたちは、互いに活発に動きまわる。警戒心も十分備わり、9割方は周囲に気を配っている。十分な安全を確認すると瞬間にエサをついばむ。9割は警戒、1割が食事の時間というわけである。仲間が大勢の時は、警戒心も緩くなり、食事に夢中になる時間が多くなるようだ。
「さあ、みんなで仲良く一緒に食べましょう」
そんな時は、互いにエサをめぐって喧嘩になる時もある。互いに飛び上がって争ったり、相手を突いて追い払ったりしている。中には翼を大きく広げて、ふざけ合って遊んでいるようにも見える。学生が休み時間に教室で自由な時間を楽しんでいる姿にだぶった。
初夏に顔を出していたカササギやコジュケイ風のオシャレな鳥はまだ姿を現さない。「カチカチカチ」や「チョットコイ コイッタラコイ」と遠くで聞き慣れた鳴き声がしているので、そのうちにやってくるだろうと、楽しみに待っている。(写真はすべて筆者写す)
「北京週報日本語版」2011年10月8日
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