張忠祥(上海国際問題研究院研究員、西アジア・アフリカ研究センター副主任)
今、アフリカ北東部の「アフリカの角」で起きている飢饉は数多くの人々の命を脅かしている。国際社会はすでに行動を開始し、現地被災者の救援に参加している。アフリカの食糧問題に再び警鐘が鳴らされ、中国政府も重大な関心を寄せている。
蔓延する飢饉
昨年来、「アフリカの角」にあるエチオピア、ジブチ、ケニア、ソマリアでは60年来稀に見る大干ばつに見舞われており、深刻な食糧危機が起きている。国連の統計によると、1200万人が干ばつによる食料不足の被害に遭っており、被害状況が最も深刻なソマリアでは、総人口910万人のうちおよそ370万人が飢餓に苦しんでいる。ソマリアでは大量の被災者が路頭に迷い、一家を挙げて長く苦しい旅の末に隣国エチオピアやケニアの国境地域に逃げ延び、そこで救援を待っている。
8月6日、ソマリアとの国境地域にあるケニア・ダダーブ難民キャンプで、水を汲むソマリア難民
大量の被災者が押し寄せたため、ケニアやエチオピアの国境地域の難民キャンプは人であふれかえり、負担に堪えられなくなっている。例えばダダーブ難民キャンプでは、大量のソマリア人が避難してきたため、難民キャンプ内の難民数がもともと想定していた基準収容人数の9万人をはるかに超えてしまった。救援活動が遅れているため、被災者は十分な食糧や飲用水などの供給をすぐに受けられずに餓死の脅威にさらされており、飢餓による併発症も難民キャンプ内に蔓延している。
「アフリカの角」の飢饉は天災であると同時に人災の側面も強い。昨年来の深刻な干ばつはもちろん重要な原因だが、それがすべてではない。アフリカの飢饉は往々にしてアフリカの経済構造、農業の重視度、平和と安全と結びついている。ほとんどのアフリカ諸国は依然として農業国だが、単一的商品構造のところが多く、逆に食糧生産は重視されていない。例えばケニアでは、輸出による外貨獲得ができる花き、コーヒー、茶葉の栽培が大いに推し進められてきた。また、今回ソマリアの飢饉被害がひどかった原因は、主にはやはり長期にわたる内戦だ。内戦は食糧生産に影響を与えただけでなく、人道支援にも大きく影響した。そのため、2011年7月29日、国連安保理は決議第2002号を採択し、「ソマリア国内の人道主義情勢の絶えざる悪化と現在の干ばつ・飢饉の影響に再び重大な関心を示し、ソマリア武装集団の人道支援輸送活動への攻撃と妨害を強く譴責する」と警告した。このほか、先進国が経済危機を転嫁したために起こった世界規模のインフレもアフリカ飢饉の重要な原因だ。今年、「アフリカの角」地域の食品価格は前年より33%前後高くなり、そのうちトウモロコシが84%、砂糖が62%、小麦が55%上がった。そのため、多くのアフリカ人が食べ物を買うことができなくなった。
「アフリカの角」の飢饉はアフリカ大陸で最初の飢饉でもなく、最後の飢饉でもない。深層にある問題が解決されなければ、飢饉は今後もまた起こるだろう。これもアフリカの食糧問題の困難さを物語っている。
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