新政権が直面する巨大な挑戦
草の根層の力はインラック氏率いるタイ貢献党とタクシングループに再び政権を執らせたが、いかにこの巨大な力を有効に導いて、タイの政治と社会を安定と発展の方向へと推進させるかが今、インラック新政権が直面する主要な挑戦となっている。
8月5日、インラック氏がタイ初の女性首相に選出されたことを喜ぶ支持者たち (新華社/AFP)
草の根の力の結集と発掘は、タクシン氏がその政治生涯において最も成功したものであり、タクシングループ最大の政治資産でもあり、タクシン氏はこれを機にタイ政治史において一里塚的な変革者となったと言える。だが、インラック新政権の眼前にいる草の根層はすでに当時とは大きく異なることに目を向けなければならない。現在の草の根層は政治への参与と利益の要求の面で高度に敏感かつ自覚的であり、票を得ることで意見を述べる以外に、この5年来、街頭政治も彼らの得意とするものとなり、より歓迎する表現方法にすらなっている。このため、政権を再び掌握した後、インラック氏が指導するタイ貢献党政権とタクシングループは全局的かつ長期的な視点に立って、政治制度の大胆な革新を進め、草の根層が政治に参与するために多元化かつ制度化された実効的な方法を開拓する必要がある。
第2の重大な挑戦は、いかに2大陣営の対立を解決し、和解を実現するかだ。前述したように、この数年、タイの政治は揺れ動き、反タクシンと親タクシンの両陣営が衝突を繰り返す深層的な根源は、伝統的エリート層、都市中産階級と草の根層との間の根本的な利益をめぐる対立にある。インラック氏は選挙期間中、「全国的な和解」を重要な確約とし、民主党もタイ貢献党に匹敵できる国民優遇政策キャンペーンを推し進めた。だが。すべては口先だけにとどまり、双方が対立する根源である利益分配問題は解決されなかった。いったん不安定となれば、双方の衝突は依然、一触即発の状態にある。
第3の重大な挑戦は、インラック自身によるものだ。彼女は優れた政治家になる潜在的な資質は豊かではあるが、その始まりから国内外にタクシン氏の代弁者、ひいては「傀儡」と見なされた。これは包み隠す必要はない。「タクシン」がタイの政治においてまだ敏感すぎる言葉であることを考えれば、政権の執行においていかにタクシン氏の作用を処理するかが、インラック政権の命運に深い影響を及ぼす。「虎視眈々」の反対派を前に、インラック氏は一種2つの難しい立場に置かれるだろう。1つは、政治経験の不足が彼女の独立した執政能力に疑問を抱かせる。いま1つは、執政にタクシン氏の影が色濃く出れば、直ちに非情な攻撃を受ける。同様にタクシン氏の代理人としてのサマック氏とソムチャーイ・ウォンサワット氏と比べると、インラック首相の道はずっと険しいものになるだろう。
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