老舗ブランドが最も苦しい立場に
北京茶葉総公司の彭広義総経理は、「京華」の栄光を今も覚えている。中国老舗ブランドである「京華」は、最盛期には年間売上高3億元、販売高は北京の茶葉市場で8割のシェアを占めていた。ところが1999年、ユニ・リーバに買収され、8年後には「京華」ブランドはほとんど落ちぶれてしまった。ユニ・リーバとの友好的な協議を経て、2007年に京華は北京茶葉総公司の手中に戻ったものの、事業は再度やり直しで、「京華」ブランドをもう一度作らざるを得ない状況となった。
「もともとの希望は良いものだった。外資企業には京華をさらに大きなブランドにする能力があるだろうと思っていたが、そうはならなかった」と彭氏は言う。この件で京華の経営層はブランドを傷つけた「身代つぶし」と非難された。
彭氏はさらにこう語る。「中国固有ブランドのうち、特に老舗ブランドに対する外資企業の買収に疑問の声が上がっている。中国国内の国民感情に押されて、外資の老舗ブランド買収に対しては、商務部もかなり慎重に審査を行うようになっている」。
中国商業連合会は「中華老字号企業(中国老舗企業)」の認定基準を次のように定めている。①工商部門に正式に登記され、かつ50年以上経営していること、②中国特有の特徴があり、地域文化性がはっきりしていること、③商業価値と文化的価値が高いこと、④商業的な信用・評判が高く、誠実な経営をしていること。これらを満たした企業のみが「中華老字号企業(中国老舗企業)」の認定資格を有する。
商務部の統計によると、今のところ全国で1600社の「中華老字号企業」がある。「中華老字号企業」は市場行為を行っている経済実体であるだけではなく、豊かな文化と人間味にあふれており、中国の消費者は自分たちのアイデンティティを感じられる民族的ブランドだと思っている。それゆえ彼らは外資企業の老舗企業買収に対して、一種の心理的な拒否反応があるのだ。
一方、外資企業は中国市場に参入する時、市場の開拓を考慮して、一般的には老舗企業に目を向ける。有名商標や「中華老字号」企業に対して、中国にはその価値を評価する基準や規範がまだないため、外資企業に買収される時にしばしば低価格で譲渡されてしまうか、もしくは競合相手から敵対的買収されてブランドを封じ込められたり、意図的に小さくされたりしてしまうケースもある。そのため老舗企業は買収に際して極めて大きな圧力と苦しい立場に耐えることになる。
2006年8月9日、商務部は『外国投資家の国内企業買収に関する規定』を打ち出した。これによって、外資による有名商標や「中華老字号」の買収は、金額の大小に関わらず、必ず商務部の審査を受けなければならなくなった。過去3年間で、申請件数の5分の1近くの老舗ブランド買収が認可された。
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