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日中国交正常化40周年に向けて  
――温家宝総理の日本への思い遣りメッセージ

 

◇地元での取材記事見当たらず◇

この記事が「人民日報」で破格の扱いで報道されたことや、中国軍機関紙「解放軍報」も国際面で報道したほか、「北京青年報」「北京日報」では、「温氏の直筆とみられる手紙の写真も併せて掲載した。」などと日本の新聞が報道した。

 日本の報道は北京駐在記者の記事で、ごく簡単なものだった。人民日報の記事が破格の扱いとなったのは、「東日本大震災を機に、昨年9月の漁船衝突事件で、悪化している日中関係を改善する方針の反映とみられる。」との解釈も日本の報道記事に付けられていた。

 日本のメディアは、なぜこのニュースにもっと注目しないのだろうか。原発事故で避難生活をしている日本の小学6年生が、中国の総理に手紙を書きその返事をもらったことは、日本国内でも大きなニュース価値があるはずだ。

 ネットで見た限りでは、福島県の地元紙ですら北京からの通信社の記事をそのまま掲載しているだけで、地元で取材をした記事が見当たらなかった。手紙を書いた小学生はどのような児童なのか。どのような気持から手紙を書くことになったのか。手紙の日本語の文章はどのような言葉で書いたのか。総理から直接返事をもらった佳代ちゃんの喜びはどのようなものか。両親や妹、それに級友たちや学校の先生方の喜びや反響は……。地元で取材をして報道すべきことはいくらでもある。これらのことは活字となった紙面で掲載されているとすれば、それをネットでも報道する価値は十分にあると思う。ネット時代の昨今、発行部数の購読者の数100倍の人たちがネットで記事を読んでいることを考慮してほしい。ネットに掲載されれば、どんなに小さなニュースでも直接世界中で読むことができる。

◇被災者に細かい心配り◇

 今回の災害に対して、温家宝総理の心配りは、5月21日に福島県の被災地を訪れた際にも見られた。避難生活をしている谷田いづみさん(52)が温総理と握手をしたあと、「笑顔と書いてくれませんか」と依頼すると、気さくに応じた。生活空間の仕切りに使っていた段ボールに、サインペンで笑顔の絵を描いたあと、「微笑地生活下去」(笑顔で生きていきましょう)と書いて励ました。

5月21日、福島市「あづま総合運動公園」体育館避難所を訪問し、避難所の子供たちと交流する温家宝総理 (黄敬文撮影)

日本の首相が地方を視察する場合、地元の人たちに対する質問や答えは当初から細かく決められている場合が多い。よほどのことがない限りその範囲から外れることはない。現地の人の話を聞いて答えるのではなく、事前に机上で予測した質問や答えなので心を打つものが少ない。温総理の場合は、その場で相手の求めに応じて書いた言葉や絵だった。谷田さんは「とても温かい雰囲気を感じた」といい、絵と言葉を「何度も繰り返し見ていて、とても励まされる」と感激している。事前に準備したものではなく、心からの思いが伝わったからだろう。小学生からの手紙の返信や段ボールに激励の言葉を書いたのは、温総理が個人を励ますとともに、被災者全員や日本人全体に対する思い遣りの表れなのだと思う。

避難所となっている体育館では、あぐらをかいて被災者と同じ目線になって話を聞いたり、子供を膝の上に乗せて励ましたりしている温総理の写真が多くみられた。中国の四川大地震でも、中国のテレビが報道する場面では、温総理が被災者の側に立とうとする姿勢が見られたが、日本の被災者に対しても共通するものがあるように思えた。

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