さらなる完備が必要
養老保険は制度上の全国民カバーを実現したが、公務員、事業単位職員、企業従業員、農村住民という4つの異なる層、異なる職業間で養老金受給待遇基準上の大きな差がある。第一財経研究院の王瑩研究員は、こうした待遇の差はすでに社会雇用バランスに影響し、人材の合理的な流動を制約する障害物となっていると言う。養老保険制度の統一は今後の1つの方向性だ。
中国経済体制改革研究会の宋暁梧会長は、企業と機関・事業単位は養老保険制度を統一構築すべきで、そうすれば多くの不必要な矛盾を減らすことができる、としている。宋暁梧会長は、統一のもの、それも当然企業従業員と公務員、事業単位職員だけでなく農民も含んだものが必要だと言う。
王瑩氏によれば、現在の養老保険制度のうち個人口座は政府主導の強制貯蓄計画と考えることができるが、現在のような実質利率がマイナスという状況下では、効果的な価値維持ルートと価値増加ルートがなければ、個人口座の大量資金は社会保障制度の負担になってしまう。推計によると、現在基本養老保険個人口座の実際収益率は2%に満たず、2005年以来の加重インフレ率は2.22%であった。これは養老保険基金が制度が求める通りに価値の維持・増加を実現できていないばかりか、かえって減少状態にあることを意味している。
中国人民大学公共管理学院の李珍教授はこれについて次のように述べている。養老保障制度を始めとする社会保障制度の改革は全体的に公平な方向へと進んでいるが、養老保障制度改革は系統的なプロセスであり、収入分配改革と結びつけて統一的に検討する必要がある。中国の高齢化社会が日増しに近づくにつれ、養老保障制度をより公平な、より合理的な、より人にやさしいものにしていくことが急務である。
李珍氏は、今後20~30年で、人口高齢化の加速により扶養者と被扶養者の比率が変化し、養老基金の支払能力は悪化の一途をたどるのではないかと懸念している。
李珍氏によれば、政府は過去6年連続で企業退職者の基本養老金を引き上げたが、食品価格の高騰や医療費の上昇により、依然として必要な生活費に満たない状態だ。2003年から、企業従業員の1人当たり平均退職金は都市住民世帯の1人当たり平均可処分所得よりも少なくなり、しかも両者の差は開く一方である。これは退職者層がすでに最低所得層となっていることを示している。早急に制度の調整を行わなければ、今後かなりの部分の退職者が貧困に陥るのは避けがたいだろう。
しかしこうした状況を中央政府は明らかに考慮している。温家宝総理は6月20日の会議で、高齢者により良い保障を提供するには完全に政府頼みではなく、個人、世帯、社会の各方面も積極的に役割を果たすべきとの意を表し、社会養老保険のほかにも、条件のある住民が個人や世帯で老後の計画を立て保険会社の養老保険に加入するのを奨励するべきだ、とした。
「北京週報日本語版」2011年7月8日 |