■すでにかなりの損失が?
張主任は、中央銀行が大量に保有している外貨準備資産の帳簿上の損益については、各方面はいずれも言及しようとしないと指摘。一般的に、外貨準備による対外投資の収益は相当なもので、年間収益率は3%前後、管理レベルは各財政基金の中でもトップクラスにある、とよく語られている。だが、毎年の外貨準備増加額をその年の対米ドル平均レートで換算コストを試算し、さらに元高後の異なるレートレベルで換算コストを試算すると、10年末時点で、03年以降増え続けてきた外貨準備に発生した為替レートによる損失は、2711億ドルに達することになる。今後、レートが6.00元まで上昇するとすれば、損失はさらに5768億ドルに達する。
張主任はとくに、上記は大まかな試算に過ぎないが、より詳細に分析したとしても、損失が巨額に上るとの結論を覆すことはできないと強調。
張主任がこうした見解を公表した翌日、5月6日、外国為替管理局はサイト上に反駁する一文を掲載し、次のように指摘している。先ず、元高が直接、外貨準備に損失をもたらすことはない。外貨準備は外貨資産であり、米ドルで通貨を記帳しているからだ。対米ドルレートの変動により、外貨準備を人民元に換算した場合に帳簿上の価値に変動が生ずる、それは実質的な損益ではなく、外貨準備による対外的かつ実質的な購買力に直接、影響は及ばない。ただ、外貨準備の調整し人民元に換算した場合は、為替の面で実質的な変化が生じる。
次に、元高による外貨準備の帳簿上の損失は、わが国の金融資産の帳簿上の利潤よりはるかに小さい。米ドル建ての外貨準備を人民元に換算した後の帳簿上の損失に相応するのは、中国の国民が保有する人民元の金融資産を米ドルで計算した帳簿上の利潤である。11年3月末現在、外貨準備高は3兆400億ドル、3月末のレートで換算すると、同期の企業や住民の人民元による預貯金、株券、国債、保険など金融資産の規模は外貨準備資産の5倍以上に上る。これは人民元が上昇した際、人民元資産の帳簿上の収益が外貨準備資産の帳簿上の損失の5倍以上になることを意味している。仮に、住民が株式や債券などの形で保有するその他の金融資産や不動産資産の規模をさらに考慮すれば、人民元資産の帳簿上の収益はさらに増えることになる。同様に、上述した損失または収益はいずれも帳簿上で計算した価値は変動し、実際に換算しなければ、それが現実となることはない。
第3に、外貨準備による実質的購買力は、外貨準備の収益率や投資する国のインフレ率によって決まる。わが国の外貨準備の運用は長年にわたり安定した収益を維持しており、運用の収益率は米国や欧州、日本など主要な投資国・地域のインフレ水準よりはるかに高く、外貨準備の実質購買力は確保されている。
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