背後にある制度上の欠陥
自動車メーカーが中国市場でリコールを「恐れる」のはなぜか。中国自動車工業コンサルタント発展公司のチーフアナリスト・賈新光氏は「中国のリコール制度の不健全さと関係がある」と指摘する。
中国のリコール関連の法律は、04年11月1日に施行された「欠陥自動車製品回収管理規定」。だが、米国などその他の国が採用している「強制的認証・強制的回収」と異なり、この規定で採用されているのは「強制的認証・自覚的回収」だ。賈氏は「しかしながら、法的強制力がなければ、自動車メーカーが自覚しないのは明らかだ」と強調。
この規定では、欠陥を意図的に隠すメーカーを対象にした「処罰」の方法が設けられているが、罰金は最高で3万元、メーカーにとって何ら拘束力はないと言えるだろう。こうした状況では、中国市場でのリコールは基本的にメーカーの自覚に頼らざるを得ない。
メーカーがリコールしない原因は2つある。1つはコストが高すぎること。通常、必要とする部品や労働コストはメーカーが自己負担しなければならない。
次に、ブランドイメージへの影響を非常に心配するからだ。多くの中国の消費者は「品質が劣る車であれば、リコールされる」と考えている。
中国市場にはこのような問題が存在する。国家品質検査総局がどの車に普遍的な安全への欠陥があるかを見つけるのは非常に難しく、また企業にリコールを命じるのも非常に難しいことから、メーカーはリコールを約束しない。消費費者の安全保護の視点から自主的にリコールを実施するメーカーはあるが、コストまたは消費者不安の誘発などへの心配を考えてリコールを拒否するメーカーもある。
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