◇日本人との交流で“人生相談”◇
翌日には、合唱団員21人が、南京大学の学生20人と一緒に紫金山に登り、頂上で交流会を開いた。団員は現役の仕事を定年で退職した人たちが多く、大半が60歳以上だったが、20歳前後の若い中国人学生を相手に楽しそうだった。1年生の学生は日本語の勉強を始めてから半年ほどだが、団員との会話はほとんど問題なく、団員も日本語の上達の速さに驚いていた。それでも、分からない単語はノートに漢字を書いたり、ときには英語で話し合っていた。
南京大学の学生と紫金山の頂上で記念撮影
年配の女性と話し合っていた女子学生(18)は、将来の進路の悩みや不安を訴えた。自分が進みたい道と両親が希望する方向が違い、どちらにしたらよいのか迷っていた。日本人の女性からは、「そのような悩みは、成長過程で誰にでもあるものです。」と言われ、これから先が長いので、ゆっくり考えて自分で決めるように諭されたという。日本人女性との交流は“人生相談”のような形になったが、同じような悩みは多くの人が経験することだと分かり、気分が軽くなったことを喜んでいた。
学生たちの多くは、日本人と直接話をする機会はあまりないが、「これまで描いていた日本人のイメージとはまったく違って、みんなとても優しい人ばかりだった」ことが共通した感想だった。「これからも日本語をしっかり勉強して、もっと多くの日本の人たちと自由に交流していきたい。」と、日本語への学習意欲を見せていた。
合唱団員のメンバーは、学生の日本語が上手なのに驚き、「素直で思いやりのある人たちばかりで、息子や娘にしたいような若者がたくさんいた。」と中国人の若者に対する認識を新たにしていた。“人生相談”の相手をした女性も、学生がとても素直に自分の話を聞いてくれたので感動した、と喜んでいる。
交流会には紫金草の花を広める運動を父親から引き継いだ山口裕さんも参加した。山口さんは来年7月、米寿を迎えるが、若い人たちとの交流をにこにこしながら眺め、「若い学生さんからは、とても強いエネルギーをもらえるようです。」と話していた。
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