◇何日間もかけて空港にたどり着く◇
合唱団員は宮城、茨城、千葉、東京、大阪、奈良、石川などの都府県にいる。東北の人たちの中には、夫や妹が亡くなったり、兄弟や親戚、友人が行方不明になった人もいる。このような状況の中で歌う気力がわかないという人や、家の中のものが倒れて片付けるのに大変な人、ガソリンや水、食糧がなく身動きが取れない人などさまざまだった。何もかもが混乱していたが、息子さんに勧められて何日間もかけてやっと空港にたどり着いて参加した人もいた。
当初参加を予定していたのは88人だったが、災害で24人が参加できなくなり訪中できたのは64人となった。これに上海在住の日本人で音楽愛好家によるオーケストラ18人も加わった。
合唱は朗読も含めた組曲「紫金草物語」(作詞・構成:大門高子、作曲:大西進)で、紫金草に関わる実話を題材にしている。序曲「大地の花」から終曲「人間として」まで11曲、そして「平和の花紫金草」を加え12曲が披露された。
戦争に駆り出された兵士が負傷して生死をさまよう中、可憐な紫金草と出会い、種子を日本に持ち帰り、平和の花として全国に広めていく。そして最後に「人間が人間として忘れてならないことがある」と歌い、「歴史を忘れず、未来につなげよう」と訴える。歌声とオーケストラの演奏とともに、心の奥底から湧き出るような二胡の音色が効果的に響き、組曲全体を盛り上げていた。
合唱のほか、南京理工大の学生らによる迫力ある「龍の舞」や舞踏も演じられた。江蘇省民盟鐘声合唱団が歌ったあと、紫金草合唱団と一緒に日本の「花」を日本語で歌い、会場から大きな拍手を浴びていた。
南京理工大生による力強い「龍の舞」の演舞
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