蘇氏の作品「探し求める」
野生動物画で有名に
「国内に戻り真に心落ち着けて創作しようとしたのですが、意外にも何を描けばいいのか思い浮かびませんでした」。そのとき、蘇氏は困惑とやるせなさを感じたが、後に友人の一言で目からうろこが落ち、創作の衝動に駆られたという。「友人は、他の人は人物や花鳥を描いているが、君は新しい手法で野生動物を描いたらどうか、と言ってくれたのです」。
「小さいころから動物が好きで、動物を観察するまなざしが好きで、一心に彼らと交流するのが好きだったので、大きくなると、頭のなかにいつも小さな動物のイメージが1つひとつ浮かんできました。とくに人類が破壊したせいで帰るところを失った野生動物、彼らのしきりに哀願しながらも、救いのないまなざしは、わたしの頭からなかなか消え去ろうとしませんでした」。蘇氏は、いま心静めて野生動物を描くのは恐らく、生命という暗がりのなかですでに定められたことなのかも知れないと話す。トラを描く場合は、獣のなかの王としての勇猛さを体現するだけでなく、多くの作品に人の要素を描き入れて、人とトラが同時に作品に現われるようにすることが、一種の調和の取れた、相携えて相生きる境地だとも言う。彼はオオカミも描くが、その目には邪悪さと狡猾さはなく、観賞する者に伝えようとするのは、動物本性の善良さと温順さだ。ヒョウもキツネも、ウサギ、リスも描くが、構図から着想まで、常に人に思いもかけない視覚上の感銘、内的な感動を与えてくれる。蘇氏自身の言葉を借りれば、「情理にかない、意外性があり、作品の最終目的は人を感動させること」
蘇氏は中国伝統の密画創作の精髄を継承、吸収すると同時、西洋の写実的表現手法を大胆に運用。動物の顔の表情と全身を描写したり、動物がいる近景の環境とその背景を浮き立たせたり、ぼかしたりすることで、動物の親密さや穏やかさ、寛大さなどを真に表現している。野生動物を描写すると同時に、動物への独特の情感をもって動物の精神的世界を解釈している。彼の作品は1つまたは複数の客観的対象を表現しているだけでなく、そこには人類と動物との間の情緒の通い合い、作者の自然に対する悟りと生活に対する悟りが示されている。西洋絵画の具象の伝統と東洋芸術の形象の伝統とが密に結合していることで、彼独自の芸術的風格をなしている。
この数年、蘇氏が創作してきた野生動物を描いた作品は様々な賞に輝き、多くの人びとに注目、認められつつある。それは多年にわたる創作と模索に対する最高の評価と言っていいだろう。
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