本誌記者 繆暁陽
今年の両会(全国人民代表大会と全国政治協商会議)期間中、国民生活に関する話題は再び世論の焦点になった。多くの注目された問題の中で、「高齢者ケア」は依然として代表・委員たちによく討論された話題であった。統計によると、中国はすでに高齢化社会に入っており、世界で唯一老年人口が1億人を超えた国である。どのように社会の高齢者ケアサービスシステムの整備を加速するのかは、中国の社会・経済が直面する課題となっている。
全国政治協商会議委員で中国人民保険集団公司の呉焔総裁(繆暁陽撮影)
注目されている「コミュニティによる高齢者ケア」
現在、中国における高齢者ケアの方法は主に在宅高齢者ケア、養護施設高齢者ケア、コミュニティによる高齢者ケアという3種類に分けられている。高齢者が自分の条件に最も適合した高齢者ケアを選択することは、老後生活の質を高める上で鍵となるに違いない。
子どもと一緒に生活できるのは最も理想的であるが、現実には、ますます多くの人々が両親の元から離れ、他都市ひいては外国で働いており、都市にも農村にも、子供が巣立ち老人だけになった「空巣」老人がますます多くなっている。民政部の統計によると、現在、都市と農村で、子供が巣立ち老人だけになっている「空巣家庭」はすでに50%を超え、一部の大中都市で70%に達した。中でも、独居老人にとって老後の寂しさは最大の問題になるだろう。
北京市民の徐暁明さんの母親は今年89歳になり、動作が不自由で、誰かが面倒を見なければならない状態である。しかし、徐さん夫妻は共働きである上に、住宅事情のせいで家政婦を雇うわけにもいかない。そこで徐さんは母親と相談し、高齢者養護施設を探すことにした。北京のある福祉施設を見つけ、昨年末に申込をしたものの、空きベッドがなく、いまだに入居することができない。「順番待ちは4000人を超え、2004年から待っている人が多数いるが、まだ入居できていない」というのが施設側の説明だ。
2010年6月に発表された民政事業発展統計報告によると、2009年末現在、中国の60歳以上の高齢者人口はすでに1億6700万人に達し、総人口の12.5%を占めた。しかし、高齢者養護施設は3万8060カ所、ベッド数は266万2000床だけで、1億6700万人の高齢者人口と比べると、焼け石に水である。高齢化に対応するには、老人ホーム、福祉施設を増やすだけでは遠く及ばない。
以上の問題を改善するために、「コミュニティによる高齢者ケア」が次第に注目されてきている。
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