本誌記者 蘭辛珍
3月5-14日に開かれた第11期全国人民代表大会(全人代)第4回会議は財政部が提出した2011年財政予算に関する報告書を審議、採択した。報告書によれば、今年の歳出は10兆220億元にのぼり、前年比で11.9%の増、初めて10兆元を突破した。
一方、歳入は8兆9720億元と、前年比で8%増えるが、中央政府の予算安定調節基金1500億元を加えると、配分可能な歳入は9兆1220億元となる。
歳入と歳出を相殺した11年の財政赤字は9000億元で、10年の1兆500億元を下回る。11年の財政赤字が国内総生産(GDP)に占める割合は2%と、10年の2.5%より低い。
歳出は民生に重き
「民生支出は財政面から充てることにしており、今年は歳出の3分の2前後を占めるだろう」。財政部の謝旭人部長は3月7日の記者会見でこう説明した。
さらに謝部長は、中央財政のほか、民生の支出は末端財政からもその70-75%を充てる考えを示した。
中国の民生支出は、教育や医療・衛生、社会保障と就業、住宅保障、文化などのほか、農業や水利、交通などのインフラ、生態環境の整備を含む。
謝部長は「11年は中央財政から民生の支出に充て、6項目の重要政策を円滑に実施する」と強調。第1は、教育への投資をさらに拡大し、農村義務教育費の保障メカニズムを完備し、都市部で働く農民労働者子弟の義務教育問題の解決に努力する。また、普通高校や大学、中等職業学校で学ぶ家庭が経済的に困難な学生への支援政策体制を健全化する。
第2は、医薬・衛生体制改革を大々的に支援する。都市・農村部住民基本医療保険と、新農村合作医療保険の加入率を90%以上にし、財政補助水準を昨年の120元から、今年は200元まで増やす。都市・農村部住民1人平均基本公共サービス費の標準を昨年の15元から今年は25元まで高める。
第3は、政府保障型住宅プロジェクトへの投資を大幅に増やす。今年建設に着手する保障型住宅やバラック改築住宅は1000万戸、農村の危険家屋改築は150万戸とする。
第4は、都市・農村部住民が対象の社会保障システム構築の加速を支援する。新農村養老保険の試行範囲を昨年の県の24%から今年は40%まで拡大するとともに、試行地区の収入源のない住民を養老保険の対象に組み入れる。都市・農村企業退職者の基本養老年金の水準を、昨年より10%前後高める。
第5は、文化事業の発展を大々的に推進する。農村と末端大衆の切実な利益にかかわる文化事業プロジェクトを優先的に支援し、博物館や記念館、図書館など公益文化施設を無料で開放する。
第6は、農業や農村インフラへの投資を確実に拡大する。とくに農地・水利の整備、中小河川の改修、小規模かつ危険なダムの強化、山津波や土石流などの災害防止の推進に力を入れる。
民生への支出が大幅に増える一方、今年の公共サービス支出予算は大幅に減る。
予算関連報告書が示すように、11年の中央財政歳出項目のうち、一般公共サービスは1118億8400万元で、4.3%の増となる。消費者物価指数(CPI)の影響(政府のCPI上昇率抑制目標は4%)を考慮すれば、11年の公共サービス支出の増加はほぼゼロになる。
財政部財政科学研究所の賈康所長は「歳出の配分から見ると、総体的に中央政府の方向性、つまり民生の改善、経済発展方式転換の促進、構造の最適化の推進が反映されている」と指摘する。
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