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◇まほらまの南京生活⑪◇~宣戦布告なき交通戦争~(~ウェンナン先生行状記~)
 

◇日本でも、かっては“神風タクシー”◇

 日本での交通死者がこれほど減少したのは、長い間の安全対策の成果である。

 日本のモータリゼーションは1950年代後半に現われた。道路渋滞があちこちで起こり、“神風タクシー”と呼ばれた無謀運転のタクシーが社会問題化した。運転手が歩合給を稼ぐため、制限速度違反、信号無視、強引な追い越し、急旋回などを繰り返す無謀な運転のタクシーが急増した。敵艦船に体当たりした旧日本軍の“神風特別攻撃隊”の戦闘機になぞらえて“神風タクシー”と呼ばれて問題になり、国会などでも取り上げられた。

 その後、歩合給の廃止や優良運転手に対して個人タクシーの認可など運転手の労働条件改善に取り組み、無謀運転のタクシーも減少した。1959年には東京オリンピックの開催が、国際オリンピック委員会で決定したことにより、日本のイメージアップのために交通法規が厳しくなり、神風タクシーはほぼなくなった。しかし、交通死者は12000人台となり、その後も増加傾向が続いた。

1970年に日本で「第一次交通戦争」◇

 交通死者は1970年に1万6765人とピークに達した。この数字は、これまでの日本の交通死者最悪の時期で、「第一次交通戦争」といわれた。毎年2万人近くが亡くなるのは“戦争状態”にも匹敵すると、新聞などでも「交通戦争撲滅」記事のキャンペーンを展開して事故防止を訴えた。

 警察行政としても、交通安全施設の整備、交通安全教育の充実と対策を徹底した。1970年には全国で2万3290基だった信号機を、16年間で約7倍の161891基にまで増やした。交通管理センターを設置して渋滞となっている道路事情をラジオなどを通じて運転手に知らせる情報提供や、一定の車の台数を所有する事業所にたいしては、交通安全指導や運行管理をする安全運転管理者選任の義務化などを実施した。

その結果、10年後には、年間の交通死者は半分の8000人台までに減少した。しかし、第一次交通戦争から22年後の1992年には11451人と、再び1万人を超える交通死者となり、第二次交通戦争のピークを迎えた。そのため、事故防止対策を一層強化し、違法駐車の厳罰化、暴走族の徹底取り締まり、シートベルト着用の義務化などきめ細かな安全対策を実施した。さらに、高齢者の事故対策、飲酒運転防止の広報活動、厳罰を徹底した。

私も新聞記者として、毎年暮れの事故防止対策で、警察署長を先頭に警察官が飲食店街に繰り出し、飲酒運転や事故防止を呼び掛ける広報活動を取材し記事にした。この事故防止は例年の歳末行事となり、市民に年末の風物詩として事故防止意識を啓発していった。

 このようにきめ細かな対策を気長に徹底して展開することにより、事故死者は年々減少した。交通戦争の2つのピークを超えて、昨年の交通死者が半世紀ぶりに4000人台になったのである。

最後の4000人台だった1952年は、日本の敗戦から7年で、私は小学校5年生。乗用車を持っている人はほとんどいなかった。自転車も一家に1台ある程度だった。子供用自転車はほとんどの家になく、貸自転車店から30分単位で借りて遊ぶ程度だった。乗用車が近所にくれば、子供たちが集まって物珍しそうに眺めていた。昨年の交通死者の数がこのような時代と同じになったのだ。

 

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