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◇まほらまの南京生活⑩◇~文化交流の民間大使~
(~ウェンナン先生行状記~)

 

◇「楓橋夜泊」の日本語読みと訳◇

 先日、学生がメールで、張継の「楓橋夜泊」の日本語読みと訳を質問してきた。日本人の友人から、中国人なら当然知っているだろうと、日本語の読み方と意味を訊かれたのだという。私は次のようにメールで返信した。

「楓橋夜泊」(ふうきょうやはく)の読み下し文は次のようになります。

月落烏啼霜満天 (つきおちカラスなきしもてんにみつ)
江楓漁火対愁眠 (こうふうぎょかしゅうみんにたいす)
姑蘇城外寒山寺 (こそじょうがいかんざんじ)
夜半鐘声到客船 (やはんのしょうせいかくせんにいたる)
 

 ここで注意することは、啼いているのは、中国語の「烏鴉」ではないということです。烏は夕方や朝方には啼きますが、「夜半」には啼きません。夜半にカラスのような啼き声でなくのは俗に「夜烏(よがらす)」と言われている「ゴイサギ」という鳥です。中国語では「蒼行+cang1heng2」と辞書には載っています。
 作者の張継は夜中にゴイサギが「カア~カア~」と啼いているのをカラスと間違えたのだと思います。漢詩に詠まれている動植物はたくさんありますが、中国の人たちは、どのようなものなのかあまり気にしていないようですが、私にはとても気になることです。

 この詩を授業中の話のついでに取りあげ、詠まれている詩の時刻は一体いつなのかを質問したことがある。学生は、「烏が啼いたので明け方かと思ったが、鐘の音でまだ夜半だったことに気がついた」「烏啼は山の名前で、夜半から明け方まで時刻の移りを表現している」などと答えた。

 何か落ち着きの悪い解釈である。夜中に「カア~カア~」と啼き声がしたことは間違いないのだろう。しかし、それは烏ではなく、夜烏といわれるゴイサギである、とすれば矛盾がない。しかし、張継はゴイサギが夜中に烏のように啼くことを知らなかったのだろう。

 これは私の個人的な推察なのだが、1000年間あまり親しまれてきた詩でも、外国人の目でみたら、時にはまったく違う観点も見えてくることもある。そこに文化交流をする意義も生まれてくるのだと思う。 

◇中国文化も持ち帰ってほしい◇

 日中間の大学文化交流などで、日本の古典研究者が南京で講演する機会がよくある。学生たちも難しい話を聴いて良く学んでいると思う。しかし、講演をした日本の研究者は、自分の話が終わるとすぐに帰国してしまう。時間的に忙しいのだろうが、言いたいことだけを話してすぐに帰るのでは交流ではない。日本文化を紹介したのなら、自身でも中国文化を学んで持ち帰ってほしい。せっかく南京にきたのだから、市内や周辺の遺跡や文化施設を見て中国文化を肌で感じるゆとりを作ってほしい。龍蟠虎踞といわれる南京市内を散策して、博物館や博物院をみるだけでも、南京への理解が格段に深まるはずである。

◇養父母慰問から歌が生まれた◇

 日本で結成した東京中国歌舞団(劉錦程団長)が、1993年から毎年訪中して、中国に残された日本人孤児を育ててくれた中国人養父母を訪れ、感謝と慰問を続けている。私も2000年に訪中団に同行して取材したことがある。訪れた養父母は80歳前後の高齢者だったが、どの人もみなとても穏やかで柔和な人だった。

今年も例年通り、東北地方に住む養父母を慰問したという。17年間にわたる長期の活動には敬服する。最近私は、訪問した養父母を思い出しながら「こんにちはと你好」という歌詞を作った。「写作」の授業の資料としてこの歌詞を使ったら、学生が見事な曲を付けてくれた。

歌詞は次のとおりだが、“文化交流民間大使”として、養父母慰問活動をお知らせするとともに、機会があれば、この歌詞をメロディとともに披露したいと思う。

 

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