湿地保護対策
99年から02年までの4年間に、扎竜湿地と水源補給地としての烏裕爾川流域は大干ばつに見舞われ、水のある700平方キロに及ぶ中央部分のうち、水が残っているのはわずか130平方キロになってしまった。2000年にはまた10数日間にわたる火事が起こり、アシは根まで燃え尽くし、湿地の生態系はほとんど破壊されて泣き面に蜂の状態となってしまった。関係方面は緊急に水源補充を実施し、01年に3500万立方メートルを、02年4月にはさらに3億5000万立方メートルの水を注ぎ込んだ。
専門家の話では、扎竜湿地の旱害は主に人為的な活動によってもたらされたという。1990年代初めから、地元で大開発ブームが高まり、湿地を囲んで開墾したり、水域を囲んで養魚池を作ったり、道や水路を作ったりして生態系が壊れ、湿地が「島嶼化」し、生態環境が「零細化」したのだ。そのため、大量のアルカリ性土壌が現れ、植物の多様性が後退し、魚類と稀少な鳥類の生息数が急減した。
推計によると、扎竜湿地が具えている洪水防止のための貯水機能、汚染抑制機能、局地的な気候調節機能、地下水補充機能、生物多様性の保護機能、生物の生産力保護機能などの機能は、良好な状態にあれば、西部の砂州が東へ広がることを食い止め、松嫩平原を保護し、アルカリ性土壌の再現を防止することができ、非常に重要な意味を持つものだ。
「深刻な水不足で、扎竜湿地の野生タンチョウの繁殖が悪影響を受けている」と王文鋒副局長は言う。昨年5月中旬のタンチョウ孵化期の末期ごろ、80羽余りを数える野生タンチョウの群で繁殖が観察されなかったことは「まれに見ることだ」と王副局長は言う。同年11月、専門家が野外観察したまだ南の方へ渡っていない70羽余りのタンチョウのうち、当年のヒナはわずか6羽、今年の営巣数もわずか20足らずで、「野生タンチョウ繁殖の成功率は低下していることが分かった」と王文鋒副局長は指摘。
黒竜江省は今年、扎竜湿地への長期給水措置を強化し始めた。省政府は毎年200万元を、チチハル市と大慶市はそれぞれ100万元を拠出して湿地給水基金を設立し、定期的に水源補充を実施することになった。また、徹底的に扎竜湿地の水不足を解決するため、今後は毎年2億5000万立方メートル以上の給水を実施することになる。
タンチョウ優先
歴史的原因によって、扎竜湿地の中央部には13の村があり、約1500世帯が住んでいた。生活のために過度にアシを刈り取ったり、漁獲したり、草原を開墾して耕地にしたりした村民の「資源を食う」行為は、原始湿地の生態系を破壊し、多くの鳥が巣と卵を捨てて飛び去ってしまった。
「原住民が生存していく必要がある一方、湿地を人間の活動から守る必要もある。最善の方法は1500世帯を他のところに移すことだろう」と扎竜自然保護区管理局の李長友局長は言う。
現在、黒竜江省は移住計画を作成し、近いうちに実施に移すことになるという。
移住に対し、多くの住民は非常に理解を示している。
07年にすでに湿地から生徒を転出させた趙凱小学校の壁には、「愛鳥光栄、護鶴有功(鳥を愛するのは光栄なこと、ツルを保護するのは立派な功労)」というスローガンが今も残っている。生徒の親たちも沼沢を出て新しい生活を始められる日が来ることを待ち望んでいる。
「北京週報日本語版」2009年8月21日 |