西渓湿地には1800年余りの背景があり、かつてはその面積が60km2に達していた。明代の文豪、施耐庵（したいあん。1296‐1371）は、中国古典文学の四大名著と言われる『水滸伝』をこの地で書き上げたとされている。ここ20年ほど、このあたりの大量の水域は「都市化」の波とともに急速に消失していき、水域のあった場所で人々は魚の養殖や養豚をしたり、そこを田んぼにしたり、工場や家を建てたりしてきた。そして、21世紀の初めには、その湿地面積はすでに10.08km2にまで減少してしまった。多くの人々にとって、03年8月以前のそこは「ドブ」にすぎず、さまざまな汚物の「投棄場所」であった。だが、その後、総合保護プロジェクトが本格的にスタート。これは、数千億元という商業開発の利益を放棄して、外資企業の手から救い出した湿地プロジェクトであった。

「小学生、中学生のころはいつも西渓で鳥や蛇を捕まえていた」と語るのは共産党杭州市委員会の王国平書記だ。彼は、あるテレビインタビューの中で、「いったん家や工場を建てたら、西渓のすべての湿地が見る影もなく破壊されてしまう。それは絶対に許してはならない。われわれは11km2の範囲内には不動産建設を許可しないことを決めた」と語った。

杭州市政府は6年の歳月と約100億元の資金を費やして、西渓湿地の整備を3期に分けて行い、今年10月までに工事を終える予定だ。

最初、工事は単に「河川網・沼沢を特徴とした湿地型の風景区」の建設として計画・設計が進められ、観光地としての経済効果が偏重される形となった。これに対し、専門家たちの意見は大きく分かれた。だが最終的には、保護区の建造物を解体・移転するほか、万全な生態系の維持と保護、環境改善と水質改善、多様な動植物資源とその生息地の保護、琴線に触れる「きめの細かい」配慮、施設建設と生態環境の調和、科学普及教育の強化を重点に、湿地としての特徴を最も具え、最も傑出した場所を相対的に封鎖し保護する工事を進めることになった。このほか、たとえ1キロあたり4000万元を費やそうとも、電線や電柱は地中に敷設すると同時に、水鳥の生息地および人工の鳥の巣などを設け、より多くの動植物が西渓で生存し、繁殖できるようにした。対外的に開放するエコ観光地区では1日あたりの平均観光客数を3000人以内に抑え、交通手段には汚染ゼロの櫓こぎ船と充電タイプの船を採用することにした。

報道によると、国家林業局の専門家は西渓湿地公園のやり方に直面したとき、非常に驚いたという。それは第1に、生態系の保護面積が94％（利用面積はわずか6％）であったこと、第2に、それが商業目的でなくエコツアーのためだけにサービス設備を提供していたことによる。

世界の湿地保護のパターンは２つある。基金による保護と政府による保護だ。だが、西渓モデルは第3のパターンだと一部の専門家は見ている。

今年3月、「杭州西渓湿地国際都市総合体概念計画」が専門家の審議を受けた。王国平書記は、「西渓湿地の保護については３つの大きな問題に対する回答を示さなければならない。そこが永遠に今日のように美しい状態でいられるのか、という問題。将来、無数の高層ビルに囲まれて“足の洗い場”のような存在になってしまうことはないのか、という問題。湿地保護のために犠牲を払った元の住民が、明日の西渓湿地保護のために発展の機会を永遠に失ってしまうことはないのか、という問題だ」と語る。そして、同書記は、西渓湿地保護の成否は、36km2の西渓湿地国際都市総合体建設の成否にかかっていると言う。それはまた、経済効果、生態効果、社会効果の間でベストなバランスポイントと最大公約数を見つけ出せるかどうかにもかかっているというのだ。