経済成長を引っ張る投資、輸出、消費という3つの牽引車では、消費の貢献度の低さが政府関係者の悩みの種となっている。中国政府は金融危機による輸出急減という状況のもと、消費が経済成長を引っ張る新しい牽引力になることを期待しており、一連の消費促進を目指す政策と措置を打ち出した。特に政府の4兆元投資には、内需牽引という目的が明確に現れている。
当面の中国の消費状況と今後の消費の動きをどう評価するか。7月4日、北京で開催された「世界シンクタンクサミット」で、国家統計局の馬建堂局長、中央財経大学の王広謙学長、零点グループの袁岳董事長がそれぞれの見方を発表した。
消費を妨げる高貯蓄率
馬建堂・国家統計局局長 中国経済の発展の中で、消費率は1952年の78.9%から2008年には48.6%に下がり、30ポイント余り減った。しかし低下した消費率とは違って、貯蓄率は増えつつあり、1992年の36.3%から2008年には51.3%に上がり、15ポイント上昇した。
改革・開放以来、中国人の所得は絶えず向上しているが、どうして消費率が上昇せず、逆に貯蓄率が高まったのか。つまり、人々は所得が増えると、なぜ消費せず貯金するのか。
第一の要因は東アジア地域の共通性である。東アジア地域の倹約を尊ぶ文化的伝統が貯蓄率の伸びに重要な役割を果たしている。2006年の世界主要国の貯蓄率のデータを挙げると、中国は33.8%、日本は27.1%、韓国は30.4%、タイは30.8%だった。欧米ではドイツが18.9%、イギリスが14.6%、米国が13.6%だった。
第二に、中国の国民の貯蓄率が高いのは、個人生活の将来を予見して慎重な態度で、病気治療や老後の生活などに備えているのだと思う。社会保障の欠如がこうした心理状態を生じさせている要因である。2008年、中国の都市部の基本養老保険に加入した従業員数は1億6587万人で、都市部の従業員1億8869万人の87.9%、基本養老保険に加入した農民工は2416万人で、全国の農民工1億4041万人の17.2%を占めた。
高すぎる貯蓄率、低すぎる消費率は中国の問題の一つとなっているため、われわれは消費を絶えず増やし、消費を刺激しようとしている。では、どのように消費の伸びを促進するのか。最もカギとなるのは、消費傾向がわりに高い低所得者の収入を増やすこと、第二に中国の国情に合った加入率の高い社会保障システムの構築を速めること、第三に所得の均衡を図り、高所得者の財産を低所得者に移動させることだと思う。これらの措置を通して中国の消費率は上昇すると信じている。
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