◇武村正義・元内閣官房長官、南京大学で講演◇
武村正義・元内閣官房長官は6月3日、「ひとりの日本人として考える」と題して南京大学で講演し、「中国は日本の失敗を反面教師として学んでほしい」と訴え、「環境協力で日中新時代を築こう」と提唱した。講演は約1時間にわたって行われ、定員400人の会場には、ほぼ満席の学生が参加し、講演のあと熱心な質疑応答が行われた。
武村氏は郷里・滋賀県の八日市市長や県知事を経て、衆議院議員に当選し、内閣官房長官、大蔵大臣を歴任した政治家である。8年前、政界を引退したが、現在は国内外で講演や緑化運動に取り組んでいる。
南京訪問は今回が3回目という武村氏は、「南京は緑と水の多いきれいなまちだ」と印象を語り、「これからひとりの日本人として、日本と中国の関係について率直な考えを述べたい」と話し始めた。
|
|
「日本を反面教師に」と訴える武村氏 |
南京大学の学生たちでほぼ満杯となった武村正義氏の講演会場 |
◇日中間にある歴史認識のギャップ◇
「日中間で引き付け合っている求心力は、なんといっても日本と中国が一衣帯水の間柄にあることだ。3000年の交流があり、ほとんどは友好的な付き合いであった。漢字、仏教、儒教などほとんどの文化は中国から移入されたもので、最近の日本では論語の本も売れている。そのほか、納豆、豆腐、マージャン、囲碁なども中国からのもので、日本人の母なる国は中国だといっても間違いではない」と、日本と中国は世界的にも類がない長い文化交流による“求心力”の強さがあることを強調した。
反対に、日中間で反発して結びつかない“遠心力”については、「日本と中国のどちらがいいかは言わない」と断りながら、「政治体制の仕組みが違う」ことを挙げた。そして、「日本人は、60万人がシベリアに送られたことや、広島、長崎の原爆のことなど、被害者の立場のことはよく覚えているが、加害者のことはあまり覚えていない。日中戦争で日本人が何をしたのか、日本人はあまり認識していない。南京事件についても、多くの日本の若い人は知らないが、中国ではきちんと教えている。このギャップは大変大きい」と、日中間の歴史認識のずれを指摘した。
|