◇中国人は偶数、日本人は奇数が中心◇
昨年の北京オリンピックでは、交通渋滞や大気汚染対策として、車のナンバーが奇数の車は奇数日に、偶数番号は偶数の日だけに運行を制限した。中国人は日常生活で奇数、偶数を身近に感じているようだ。それはなぜなのか。
あれこれ考えてみたが、この感覚は古代中国の陰陽五行説からきているのではないかと気がついた。陰は偶数、陽は奇数である。「陰」は「昔の中国の哲学で、宇宙や人間社会を貫く二大対立面の一方」(「中日辞典」小学館)で、「陽」は「易学では、世界は相反する性質をもつ陰と陽からつくられていると見なし、女性に対する男性、月に対する太陽など、積極的とされるほうを陽とする」(同)となっている。世の中はすべてプラスの「正」とマイナスの「負」など対立するものから出来ているというわけである。
この思考が現代にも活かされ、中国人は偶数が好きなようだ。結婚のお祝いには多くの場合同じものを2つプレゼントする。春節のお祝いで年始回りをする「拝年」の祝い品は、4種類か6種類など必ず偶数にするのが慣わしとなっている。中国料理でも盛り付けや点心などは4、6、8と偶数で出される。しかし、広東料理店や香港料理店で注文した点心は奇数だったので、なぜなのか不思議に思っていた。広い中国のことだから、何か特別な理由があるのだろう。
日本人は奇数の世界が中心である。結婚式のお祝いをするとき、偶数では2で割り切れることから「別れる」の意味となることを嫌うためだ。お祝い金も1万円、3万円、5万円など奇数にする。友人らで集めた金額が4万円の偶数になった場合は、1万円札3枚と5000円札2枚に分けて5枚の奇数にして、偶数になることを避けるのが習慣である。日本人の一般的な生活で奇数、偶数はあまり意識されないものの、冠婚葬祭などの際には古くからの考えが残っているのだろう。
冠婚葬祭だけでなく、日本人の食生活にも奇数が中心になっていることはあまり知られていない。日本料理で刺身の盛り付けはすべて奇数とするのが基本である。料理の本にも「刺身の切り身は必ず奇数盛りが原則」と書いてある。奇数の方が日本人にとって安定感があり、バランス感覚に合致するのかもしれない。
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